[ オピニオン ]
(2018/3/15 05:00)
神戸製鋼所の品質データ偽装問題が、川崎博也会長兼社長の辞任に発展した。同社は再発防止に向け、企業統治の仕組みや品質管理体制を再構築する。トップ交代を機に組織や経営のあり方を徹底的に見直し、信頼回復を急ぐ必要がある。
神鋼が先ごろまとめた最終調査報告では不正の原因について収益評価に偏った経営姿勢の下で各事業部門が「生産至上主義」に陥ったなどとした。さらに不正が長年にわたって続いた背景として、縦割りの「閉鎖的な組織運営」を挙げた。
ただ縦割りの問題は現場の組織運営だけにとどまらない。調査ではアルミニウム・銅事業部門の歴代担当役員3人が不正を認識していたほか、2人が役員就任前に不正に関わっていたことが判明した。今まで発覚しなかったのは経営陣の間にも縦割り意識がはびこり、担当以外の業務に干渉しないことが慣習化していたためと考えられる。
調査結果を踏まえた再発防止策では独立社外取締役の数を取締役全体の3分の1以上とし、この中から取締役会議長を選ぶ仕組みに改める。チェック機能を強化して、企業統治を立て直す狙いだろう。
外部人材の活用などによる監督体制の強化は、投資家の信任を得る上でも避けて通れない課題と言える。それは不祥事を防ぐだけでなく、的確な意思決定によって企業価値を高めるためでもある。この点を認識し、より緊張感を持って経営に当たる必要がある。
一方、品質面では工程能力の向上が課題となる。日本のモノづくり産業は「カイゼン活動」などで現場力を鍛え、工程能力を高めて顧客の厳しい要求に応えてきた。だが、ここにきて熟練工の一斉退職や非正規雇用者の採用が進み、歩留まり向上の難易度が高まっている。
経営陣はこうした課題にしっかりと目を向け、人材確保・育成や業務改革、生産性の向上に必要な投資を実行しなければならない。このためにも縦割りを排除し、投資の優先順位や、めりはりを全社規模で議論できる土壌をつくることが重要だ。
(2018/3/15 05:00)
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