[ オピニオン ]
(2018/3/23 05:00)
環境負荷が大きい石炭火力発電所の新増設に、どう歯止めをかけるか。法的規制を回避するためには、電力業界による自主的な取り組みの徹底が必要だ。
環境省は2017年度の電気事業分野における地球温暖化対策進捗(しんちょく)状況評価で、課題や懸念を示した。同省は電力業界の自主的な温室効果ガス排出削減の取り組みを前提に容認姿勢を示していたが、再び実効性について疑念を強めている。
国内の二酸化炭素(CO2)排出量のうち約4割が電力部門から。そこに東日本大震災後の電力需給逼迫(ひっぱく)と電力自由化を背景として、安価な石炭を燃料とする発電所の計画が相次いだ。
政府は15年、地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」の採択を前に、30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で26%削減する目標を決めた。その前提となる30年度の望ましいエネルギーミックス案で石炭火力の割合は「26%程度」だ。
これに合わせる形で、電気事業者35社は同年、30年度のCO2排出係数を0・37キログラム程度とし、火力新設に当たり実用化できる最良の技術(BAT)を活用することにより、年間で最大約1100万トンの排出削減という目標を設定した。
だが今後も自家発電を含めた石炭火力の新増設が続けば、削減目標の達成が危ぶまれる。当時の望月義夫環境相は履行を担保する仕組みがないことから、環境影響評価法に基づいて事業者が提出した環境配慮書に対し、意見書で「是認しがたい」を繰り返した。
その後、電力業界が取り組みをチェックする「電気事業低炭素社会協議会」(既存電力と新電力42社加盟)の設置に動き、翌16年に後任の丸川珠代環境相が経済産業省との間で新設容認に合意した経緯がある。ただこの協議会も任意団体であり、拘束力がない点は変わりない。
現状のままでは、2年前の議論に逆戻りするだけだ。一方で原子力発電所の正常化など、最近の電力供給構造にも変化が見られる。CO2排出量削減の目標達成には、石炭火力に頼りすぎない姿勢が重要となる。
(2018/3/23 05:00)
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