[ オピニオン ]
(2018/3/22 05:00)
最高経営責任者(CEO)の選任・解任は、企業経営の中で最もベールに包まれた部分だ。客観的で透明性のあるルールになっているかどうか、きちんと見直す必要がある。
金融庁の有識者会議「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(池尾和人座長=慶応義塾大経済学部教授)が、二つのコードの付則として、機関投資家と企業の対話で重点的に議論すべき事項をまとめた「投資家と企業の対話ガイドライン」案を公表した。中でも注目されるのはCEOの選解任の事項だ。
同会議の案では(1)CEOに求められる資質について確立した考え方があるか(2)業績などの評価を踏まえてCEOが機能を十分発揮していない際に解任するための客観的かつ透明性のある手続きが確立しているか―などを議論するよう求めている。また十分な時間と経営資源をかけてCEOを選任したかを問い、その手続きに実効性を持たせるために独立した指名委員会を活用することも促している。
言うまでもなく、CEOの選解任は企業にとって最も重要な意思決定だ。経営環境の変化スピードが増す中で、その重要性は高まっている。
だが多くの企業で、CEO候補の育成や選任は不透明な部分が多いのが実情だ。同会議は別の報告書の中で、CEO選解任の基準の整備が進んでおらず、後継者計画を取締役が十分に監督している企業は少数にとどまると指摘している。日本企業の国際競争力を高める上で、CEO選解任の基準があいまいであることは決して無視できない問題である。
機関投資家は受益者に対し、中長期的なリターンの拡大を図る責任がある。そのためには投資先企業の特徴や事業環境を把握した上で投資先と直接、対話し、企業価値の向上や持続的成長を促さなければならない。
日本企業が更なる成長を遂げるためにも、CEOのあり方について機関投資家と意見交換をすることは意味のあることだ。ぜひ議論を深めてほしい。
(2018/3/22 05:00)