[ ICT ]
(2018/4/5 14:00)
KDDIが新たなリーダーの下でスタートを切った。1日に就任した高橋誠社長は事業戦略として「通信とライフデザインの融合」を掲げ、スマートフォン顧客などに物販や金融などの非通信サービスを提供する体制の強化を加速させる。電子商取引(EC)などで巨大な顧客基盤を作り上げた楽天が携帯キャリア事業に参入するなど、市場環境の変化が予想される中で持続的な成長をどう実現するのか。高橋社長に聞いた。(葭本隆太)
―事業戦略として掲げる「通信とライフデザインの融合」の具体策は。
「我々は多様なアプリやウェブサービスを提供しており、毎日1000万人くらいが利用している。そのデータを活用することで顧客を理解できる。それを基盤にライフデザイン商材を顧客に提案することが基本だ。その中で時代はモノ消費からコト消費に変わっており、顧客がサービスをどう体感したかという体験価値の提供が重要になる。顧客の生活が楽しくなる商材とは何かを議論している」
―体験価値を意識したサービスとは。
「ECでの買い物を(ライブ動画で商品を紹介するライブコマース機能などを導入して)楽しくしたり、温泉と音楽ライブなどのパッケージ旅行を顧客のデータに基づき提案したりするイメージだ」
―ライフデザイン商材としては「EC」「金融」「教育」などを強化していますが、今後追加したい分野はありますか。
「顧客が楽しくなるサービスであればどんどん追加していけば良い。今までのECや金融といった(分野ごとの)整理はプロダクトアウトの考え方だった。ECや金融などを担当する部署とコンテンツなどの担当部署を統合しており、新しいサービスを作る体制は整えた」
―楽天の携帯キャリア事業参入をどう受け止めていますか。
「多様な企業が競い合ってサービスを作ることは顧客にとって良いことだ。ただ、新しい競争軸が生まれるため我々も頑張らなくてはいけない。一方、通信インフラの構築にはコストがかかる。全国の隅々に通信環境を提供する場合に(楽天が計画する)6000億円は決して十分ではないと思う」
―楽天はECなどのライフデザイン領域で蓄積した9500万人以上の顧客基盤を“武器”に参入する計画ですが、どう対抗していきますか。
「我々も4000万人の顧客を持ち、通信サービスにより(ECなどの顧客よりも)強くつながっている。このため(我々の方が)顧客の行動はより深く理解できると考えており、(ライフデザイン商材の提案において)強みになる」
―法人向けのIoT(モノのインターネット)事業拡大のための戦略は。
「IoTは通信だけで利益を生むのが大変だ。IoTを活用した新たなビジネスモデルを作らなくてはいけない。このため、デザインシンキングやアジャイル開発、データ分析を議論できるIoTラボを夏頃に開設する。施設の周りには第5世代移動通信(5G)の通信網を構築して試験できる環境も作る。我々が投資してきたソラコムやアライズなども参加し、顧客企業によるIoT事業の開発を支援していく」
―海外事業の戦略は。
「現在はミャンマーやモンゴルで携帯電話事業を展開しており、次の進出先として東南アジアのいろいろな国を検討している。(東南アジア各国は)平均年齢が若いためビジネスチャンスはある」
(2018/4/5 14:00)