[ オピニオン ]
(2018/4/11 05:00)
無頼派作家と呼ばれた檀一雄は、最晩年の2年を福岡市能古島で過ごした。東京から移住した際に建て替えた新居には大きなキッチンと食堂をあつらえたという。料理好きをほうふつとさせるエピソードだ。
「女性が嫌なら料理のような面白いことは男が全部引き受けてやる」とまで言い切った。死後42年。もはや「男子厨房(ちゅうぼう)に入らず」は死語になりつつある。逆に「料理男子」なる言葉が市民権を得ている。
1日に東京ガス社長に就任した内田高史さんは入社以来、ホームパーティーを継続的に開いている。「みんなでワイワイして、楽しんでもらうのが好き」と、同僚や部下、職場に出入りする委託業者らを自宅に招き、一時を過ごす。
その際に、必ず振る舞うのが「小さい頃から近くで見ていて、自然に覚えた」という母親直伝のお好み焼き。社内の打ち上げでお好み焼きの作り方を自ら指導して、何十枚も焼いた経験もあるそうだ。
かつて「妻が夫の“胃袋を掴(つか)む”ことが家庭円満の秘訣(ひけつ)」と言われた時代があった。男女の役割は変化したが、おいしいものを嫌いな人はいないのは、変わらぬ真理だろう。リーダーたるもの、部下の心を掴むにはまず胃袋から―という戦略もあるのかも。
(2018/4/11 05:00)