[ その他 ]
(2018/4/27 05:00)
航空技術で建設業開拓
■振動可視化レーダー「VirA」
「航空の世界から建築・建設の世界に提案し、新市場を開拓する機器」。アルウェットテクノロジー(東京都三鷹市)の能美陽取締役は、非接触でインフラ点検ができる振動可視化レーダー「VirA(ビラ)」にかける思いをこう口にする。
ビラは離れた場所から橋梁やビルなど大型構造物の表面の微細な振動を高精度かつリアルタイムで計測。約200メートル離れた構造物でも20マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の精度で振動を計測できる。本体を地上に設置して計測できるため大がかりな足場の設置やセンサーの取り付けが不要。建物の耐震強度を推定するための振動測定では、外部から計測し建物の状態を把握できる。振動計測のあり方を大きく変えるこの製品には、航空の分野で磨かれた技術が生かされている。
同社は地表面を映像化する航空機搭載合成開口レーダー(SAR)を手がける。能美仁社長は元々、航空機や人工衛星に搭載するSARの開発者。大手企業在籍時に抱いた、小型で低価格のSARを実用化したいという夢を追いかけて起業した。
能美社長は自社の強みを「レーダー開発の内製率90%」と言う。デジタル回路やアンテナ回路、信号処理、ソフトウエア開発まで社内で対応。徹底した内製化で短納期、低コストを追求し、技術開発型ベンチャーとしての競争力強化に力を注ぐ。こうした技術開発力がビラへと結実する。内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」事業で開発にこぎ着けた。
今後は運搬や粉塵(ふんじん)・雨天時の計測を見据え、本体の小型化や耐環境性を高めていく考え。能美取締役は「現場で使用するのに必要なアイデアを温めているところだ」と話す。掘削斜面の微小変位、地下工事に伴う路面変位、ダム堤体微小変位など多様な分野での応用に期待を寄せている。(西東京支局長・成田大典)
(2018/4/27 05:00)