[ 政治・経済 ]
(2018/5/9 13:30)
イラン核合意を離脱し、同国に対する経済制裁を再開させるというトランプ米大統領の決定により、石油市場の供給ひっ迫リスクが世界的に高まったほか、イランとの巨額なビジネスがふいになる可能性が出てきた。
しかしイラン制裁の再開は6カ月かけて徐々に進められる。このため米国は従来の合意の補完もしくは全く新たな合意を目指し交渉する時間が得られる見通しだ。
トランプ大統領の決定により、イランとの新たな契約締結は即時禁止されたほか、現在イラン企業とビジネス契約を結んでいる企業には90日と180日の期限が設定された。この期限内に各企業はイランの中央銀行と金融セクター、石油産業などを対象とする幅広い制裁措置に従わなければならない。
具体的な制裁措置は以下の通り。
最初の期限である8月6日までに各企業はイラン国債ないしイラン通貨の保有を段階的に縮小しなければならない。イラン政府のドル獲得ないし買い増しを助ける個人ないし企業はこの日までに制裁を科される。
またイランの金などの貴金属、黒鉛・石炭、アルミニウムや鉄鋼などの金属の貿易や、イラン自動車業界、じゅうたんやキャビアなど高級品への制裁も8月6日に再開される。
ムニューシン米財務長官はトランプ大統領による離脱発表後のブリーフィングで、各社は制裁回避のための制裁免除ないし特例措置を申請でき、ケース・バイ・ケースで判断されると述べた。
イランの石油業界とビジネスを行っている企業への制裁は11月4日に再開される。これにはイラン中銀と大きな取引を行っている外国金融機関への制裁も含まれる。
さらにイランのエネルギー業界に制裁を科すほか、イラン国営石油(NIOC)などの企業との石油関連取引も対象とする。
RBCキャピタル・マーケッツの主任商品ストラテジスト、ヘリマ・クロフト氏は、イランの石油輸出は「実施率次第で」日量20万-30万バレル縮小すると予想していると分析した。
米国は、自国の金融機関への制裁を回避したいと考えている諸外国に対し、180日の段階的制裁導入期間内にイランからの原油輸入量を減らすよう勧告した。米国務省はケース・バイ・ケースで各国がイランからの輸入を十分減らしたかどうか判断する。
さらに、イランへの追加経済制裁の可能性も浮上した。ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はトランプ大統領の発表後に記者団に対し、「新たな情報が明るみに出れば、追加制裁が科されることも十分あり得る」と発言した。ただ対象となる業界ないし企業については明らかにしなかった。(ブルームバーグ)
(2018/5/9 13:30)