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[ 科学技術・大学 ]
(2018/5/19 15:00)
米航空宇宙局(NASA)は、人類史上初となる火星ヘリコプターの打ち上げ計画を明らかにした。ソフトボール程度の大きさの自律航行する回転翼機を、2020年7月に打ち上げる火星探査機「マーズ2020」とともに送り込み、上空からの飛行探査の可能性を世界で初めて検証する。NASAのジム・ブリデンスティン氏は「地球以外の空を飛ぶ初のヘリコプターにとても興奮している」と語った。火星ヘリコプター開発は、NASAのジェット推進研究所(JPL)のプロジェクトとして13年8月から進められていた。
NASAの発表によると、火星ヘリコプター「マーズ・ヘリコプター」は野球ボールサイズで重さ1.8キログラム未満の超小型の機体。バッテリー駆動用の太陽電池や、平均気温がマイナス40度を下回る極寒対策用の温熱機構などを備えている。2枚羽のメーンローターは2重反転式で、飛行の安定性と高出力を狙った火星仕様だ。
火星の環境は、重力は地球の40%、大気は地球の1%ほどしかない。そのため揚力を生み出すローターの回転数は毎分約3000回転にも達するという。これは地球上で運用される一般的なヘリコプターの約10倍。JPLのミミ・アウン氏は「火星上で飛ぶヘリコプターは地球上では上空10万フィート(約3万メートル)に相当する」と語る。民間航空機の一般的な巡航高度の3倍、あと数千メートルで成層圏に届くような過酷な環境下での飛行となる。
火星では、探査ローバーがマーズ・ヘリコプターを地面に設置。地球からの指示によってバッテリーへの充電やいくつかのテストが実施される。通信遅延による影響から、リアルタイムの操縦制御に代わって「地球からのコマンドを解釈し飛行する自律飛行能力を備える」(同氏)。最大数百メートル、90秒以上の飛行テストを5回予定する。歴史的な最初の飛行は約10フィート(3メートル)まで垂直上昇し、30秒間の空中停止となる予定だ。
NASA Mars Helicopter Technology Demonstration(NASA Jet Propulsion Laboratory)
火星探査は90年代以降、「マーズ・パスファインダー」や「オポチュニティ」ロボットなどを使った地表調査が進んでいる。20年からは地震探査計を使用した内部構造調査も「インサイト」探査機で予定されている。今回の計画は、人類における火星の可能性を探る新たな一歩を踏み出すとともに、100年以上前にライト兄弟がもたらした革命を新たなパイオニアたちが別の世界で証明する可能性がある。「マーズ2020」探査機は、フロリダ州のケープカナベラル空軍基地からユナイテッド・ローンチ・アライアンス(UA)のアトラス5ロケットで打ち上げられ、21年2月に火星に到着する予定だ。
(2018/5/19 15:00)