[ オピニオン ]
(2018/5/21 05:00)
途上国での環境ビジネスは一筋縄ではいかない。コスト要求が厳しく、投資回収のリスクがあるためだ。そこで途上国での事業展開を後押しする環境金融が世界的に広がっている。
環境金融として注目されているのが、国連による最大規模の気候変動対策ファンド「緑の気候基金」だ。2011年に設立され、43カ国が合計103億ドルの資金協力を表明している。米国が政権交代後に拠出停止したため、現時点で15億ドルの支援を約束した日本が拠出額首位だ。
基金に集まった資金は、途上国での環境ビジネス立ち上げに使う。民間や公的機関から提案があった案件を基金の理事会が審査、承認する。3月末までに76件の事業に総額37億ドルの援助が決まったが、日本企業が主体となったプロジェクトはない。
76件は再生可能エネルギー発電所の開発、建物の省エネルギー化、洪水対策、砂漠での農業など幅広い。技術指導といったサービス事業をセットにするなど、枠組みもさまざまだ。プロジェクトを分析したみずほ情報総研(東京都千代田区)の永井祐介コンサルタントは「日本企業も参加できるパターンがある」と期待する。
環境事業に資金を充てる債券「グリーンボンド」の発行も急増している。公共施設の省エネ化や都市交通の整備に起債する自治体が多いが、最近では再生エネ発電所の建設資金を調達するなど事業者による発行が増えている。
投資家の団体「クライメト・ボンド・イニシアチブ」によると17年は世界全体の発行額が1555億ドルとなり、15年の4倍近くに膨らんだ。発行者の所在地は米国が34%と最大だが、メキシコ、インド、中国など途上国にも広がっている。金融手法で環境ビジネスを動かそうとする潮流が生まれている。
日本企業は高い環境技術を持ちながら、高コストが足かせで、思うように海外展開が進んでいない。また金融を組み合わせた案件形成も得意ではない。緑の気候基金、グリーンボンドといった環境金融を生かし、途上国進出の突破口をつかみたい。
(2018/5/21 05:00)
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