[ オピニオン ]
(2018/5/25 05:00)
第3期海洋基本計画は、資源開発に軸足を置いてきた過去2期の計画から安全保障中心に転換する内容となった。海洋権益を守る安全保障は重要だが、海洋に関する研究開発を後退させるわけにはいかない。わが国製造業にとっても成長を見込める分野の一つである海洋産業発展のため、世界における競争力を高めなければならない。
島国である日本の国土は海洋に面し、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積は、世界第6位。海洋開発を進めることは、日本の弱点であるエネルギーや鉱物資源の確保という面で大きな可能性を秘める。
それだけにとどまらない。海洋調査や構造物の市場は今後の成長を見込める。まだまだ分かっていないことが多い海洋は、宇宙分野と並び、研究開発の進展が期待される分野でもある。
自律型無人潜水機(AUV)や遠隔操作型無人潜水機(ROV)など水中ロボットの実用化も見込める。複数の中小企業や大学などがネットワークを組み、水中ロボット開発などのテーマに取り組む事例も見られる。
ただ、軍事技術をベースに研究開発の蓄積が多い海外各国に比べて、日本の海洋研究開発は後れをとってきた。
海洋分野に関する総合コンベンション「テクノオーシャン2018」が、米国の海洋国際会議「オーシャンズ」と合同で「OTO’18」として、29日から神戸市で始まる。会期中に海洋技術に関する論文が29カ国から504編が発表される予定だ。
しかし、そのうち215編が中国の研究者による発表で、地元開催にもかかわらず日本の発表は104編にとどまる。国策として海洋関連技術の研究を推進する中国に比べ、わが国の海洋研究は後じんを拝していることは否めない。
第3期海洋基本計画の方向性は「新たな海洋立国への挑戦」。安全保障を第一としながらも、産業利用の促進、環境の維持・保全、科学的知見の充実なども盛り込まれた。産業界、研究機関が海洋研究の輪を広げることで海洋技術立国に挑み、豊かな海の活用を期待したい。
(2018/5/25 05:00)
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