[ オピニオン ]

社説/米朝首脳会談中止? 世界経済成長のために対話続けよ

(2018/5/28 05:00)

6月12日に予定されていた史上初の米朝首脳会談が“幻”となった。歴史的な会談を実現するには、それなりの姿勢と時間が必要で、両国が短兵急に準備を整えることに無理があった。しかし、いずれは会談は実現すべきで、粘り強く対話は続けてほしい。産業界も北東アジアの平和を願っている。

もし、会談が実現すれば世界経済という視点で見た場合、単なる北東アジアの安全保障にとどまらない。北朝鮮の経済政策重視が鮮明になれば、北朝鮮をめぐる貿易が膨らみ、日本経済も大きな追い風を受け、世界経済も景色が変わるからだ。

トランプ米国大統領が米朝首脳会談中止を決めた。核の完全放棄を迫る米国と、最大限の見返りを求める北朝鮮。事前交渉が難航したのは間違いない。ただ、北東アジアの今後の平和を占う意味で、米朝関係のあり方は、大きな影響力をもつ。重要なのは、最終的な合意に向け、対話を続けていくことだ。トランプ大統領も北朝鮮の金正恩委員長あてに送った書簡で、「もし、あなたが心変わりをして、この最も重要な会談を望むというのなら、ためらわずに手紙を送ってほしい」とし、対話路線に戻る可能性もほのめかした。

29年前に欧州で起こった歴史的ドラマが、アジアでも起こってほしい。1989年、ドイツ分断の象徴で、かつ東西冷戦の象徴でもあった「ベルリンの壁」が崩壊し、東西ドイツの統合が実現した。ドイツをはじめ欧州の株価は上昇を始めた。米国でも大型景気が始まり、ダウ工業株30種平均も上昇。世界貿易が拡大に転じ景気が浮上した。

もし、会談が実現すれば、世界経済がより拡大に向かう。関係各国の間で非核化後の青写真や経済支援・インフラ整備などについて準備も進む。ベトナムなどと同様に、改革開放政策で経済発展の道を進んでいく。経済復興により、北朝鮮の1人当たりの国内総生産(GDP)が韓国と同水準になれば、世界経済の1%に相当する約8000億ドルの需要が生まれる。東アジア経済が活性化し、世界経済成長に貢献するだろう。

(2018/5/28 05:00)

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