[ オピニオン ]
(2018/5/30 05:00)
製造業を取り巻く大規模な環境変化に、経営者はより危機感を持つ必要がある。
政府は29日、2018年版の「ものづくり白書」を閣議決定した。経済産業省など3省が分担執筆しているが、今回、初めて共同で「総論」を掲載し、企業トップに従来以上の危機感を訴えたのが特徴だ。
足元の景気は底堅く推移しており、産業界の多くの企業では人手不足が問題になっている。しかし、同時に進む構造的な変化は「リーマン・ショックや東日本大震災以上に深刻なものとして受け止めるべきだ」と経産省幹部は話す。
白書が指摘する危機感はいくつかある。第一に、デジタル人材の不足など質的変化に対応できていない恐れ。第二に、これまで日本企業の多くが「強み」と考えてきたすりあわせ技術や顧客の意向重視の営業が、逆に変革の足かせになる恐れだ。
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の活用など、生産の仕組みを大きく変えることで「スマートファクトリー」が生まれる。しかし実際に、それを遂行するデジタル人材が「業務上不要である」と考える割合が、中小企業で40%にも及ぶと白書は指摘する。
こうした問題の背景には、経営者が「大変革期」を認識できていない恐れがある。さらに従来型の改良・改善ではなく、非・連続的な変革の必要性が十分に浸透していない。だから少なくない企業がIoTへの対応を現場任せにし、ボトムアップに期待している。
例えば現場から得られる質の高いデータや属人的な知見を、組織として資産化していくには経営力が必要だ。モノづくりの付加価値向上も、また省人化や円滑な技能承継も、現場の努力だけでなく、経営者が直接関与し、自社の「現場力」を再構築しなければ実現しない。
白書はこうした「経営者の使命」をメッセージとして、具体的な取り組みの参考となる多くの先行事例を紹介している。スマートファクトリーを早期に実現するためにも、トップが自ら学びたい。
(2018/5/30 05:00)
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