[ オピニオン ]
(2018/6/19 05:00)
18日に大阪府北部で発生した最大震度6弱の地震は多くの死傷者を出し、あらためて自然の脅威を浮き彫りにした。いつか来る巨大災害に備え、ハードとソフトの両面で人事を尽くさなければならない。
南海トラフ地震による経済的な損失が、地震発生から20年間の累計で最大1240兆円に上るとの推計を、土木学会が先ごろまとめた。幹線道路の寸断や港湾の損壊が地域の経済活動に及ぼす影響を試算した結果だ。建物が倒壊するなどの物理的被害を加えると、1410兆円に達するという。これは名目で年約550兆円の日本の国内総生産(GDP)が、20年間にわたって平均70兆円余り消滅することに等しい。
ただ、建物や橋の耐震化、道路網の整備といった対策を事前に講じれば、被害額が500兆円余り減って「国難」とも言える事態を避けられるという。
政府が厳しい財政事情から公共投資を抑えてきたため、公共インフラの脆弱(ぜいじゃく)化が進んだ。巨大災害の影響を少しでも減らせるよう国土強靱化(きょうじんか)を急ぐ必要がある。学会の推計も念頭に置き、持続的な経済成長や国民の安全・安心に資する公共インフラのあり方を再考すべきだ。
もう一つの課題は発災時に政府や地方自治体、地元企業、地域住民らがどのように行動すべきかといったソフト面の対策づくりだ。
政府は従来、南海トラフの北端を震源とする東海地震の発生を高い確度で予知できるとの前提で、南海トラフ地震への対策を講じていたが、その後の研究で予知困難なことが分かった。このため、政府は対策を抜本的に見直し、地震発生の兆候が少しでも認められた時、的確な行動をとるよう地元住民らに呼びかけ、被害を抑える方向に切り替えた。
今後は地震の兆候があった時や、発災後の刻一刻と変化する状況下で、住民らがどう行動すべきかをあらかじめ明確にしておくことが重要になる。自治体や政府、産業界が密に連携し、地域の実情に沿った行動計画に仕上げてもらいたい。
(2018/6/19 05:00)