[ その他 ]
(2018/6/20 05:00)
粉体技術は日常生活から最先端分野まで、幅広い産業の進展を支える基盤技術として重要な役割を担う。扱う粒子径もナノメートル(ナノは10億分の1)領域が定着するにつれ、活用範囲はさらに拡大している。中でも、先端産業での新材料開発には粉体技術が欠かせず、また、さまざまな粉体プロセスが複合的にかかわるため、各プロセスの技術開発を促すことにつながっている。一方、粉体シミュレーションにも注目が集まり、粉体プロセスでの課題解決や機器・装置の最適化の検討に威力を発揮するなど、活発な動きをみせている。
■18年度の協会活動への取り組み
日本粉体工業技術協会 代表理事会長 山田幸良氏
「産業界に貢献、各種施策で活性化」
当協会の会長として2期目に入ったが、2016年に会長を引き受けた際に取り組んだのは協会の活性化で、ここにエネルギーをつぎ込んできた。中でも、協会活動の柱の一つである分科会では、17年度の粉体シミュレーション技術利用分科会に次いで、18年度には粒子積層技術分科会を立ち上げた。いずれも粉体産業の中では新しい分野に当たる。
粉体シミュレーションに関する分科会はかつて存在していたが、活動を停止した。あらためて立ち上げたのは、シミュレーション技術を機器設計などに活用する時代になり、この側面をより深掘りしなければならなくなった。名称に?利用?を加えたのもそのためだ。
委員会にナノ粒子利用技術委員会があるが、学問的なベースも大事だが、産業界で役立てるにはいかに利用するかが重要である。分科会の視点も産業界に役立つことを強調していきたい。粒子積層技術分科会はナノ粒子利用技術委員会から派生したが、ナノ粒子も活用して製品化につなげていくことが念頭にある。
こうした新たな分科会の立ち上げは会員数の増加につながり、17年度は法人会員12社が新たに加わり、バブル期の308社に迫る304社となった。粉体が社会や産業界に貢献していることの裏付けで、これに呼応した施策を打ち出していく。
一方、東京と大阪で交互に開催する粉体工業展も、16年の「国際粉体工業展東京2016」では前回(14年開催)に比べ来場者が14%増となり、17年の「粉体工業展大阪2017」も前回(15年開催)に比べ、16.4%増の来場者を記録した。これまで、研究開発に軸足が置かれがちであったが、それで終わらせず、実際に役立てることに視点を移したことが奏功した。
ただ、来場者が増えたといって安閑とはしていられない。今後は、いかに出展者を増やすか。国内だけではなく、中国や韓国をはじめ、東南アジアまでテリトリーを拡大し、来場だけではなく、出展する側に回ってもらうための方策が求められる。受け入れ態勢の充実とともに、現在、世界各地に行われている粉体関連展示会との連携強化も必要になる。
さらに、展示内容の充実と先を見据えた取り組みとして、「国際粉体工業展東京2018」では包装機械ゾーンを設ける。粉体に関連した包装機械が中心となるが、これにフォーカスすることで、新たな出展企業獲得につながると期待する。
一方、将来の協会を展望し策定した3カ年の中期運営計画は、18年度が最終年度に当たり、次期中期運営計画の策定に着手する。現中期計画は、協会運営を一気に変えることによる混乱を避け、フォロー型とした。ただ、施策だけでなく、これまであまり語られてこなかった活動費用面にも焦点を当てた。次期中期計画では、一歩も二歩も踏み込んだ内容にしなければならない。それが協会の健全な発展につながる。
その実現には、計画の内容も重要だが、実際の運営に携わる人材の育成・強化も急がなければならない。これらをうまく機能させることも命題ととらえ、18年度の協会運営を進めていく。
■日本粉体工業技術協会 中期計画の遂行目指す
日本粉体工業技術協会(京都市下京区、山田幸良会長)は5月23日、第37回定時総会を開き、2017年度の事業および決算報告、18年度の事業計画、予算案を決議した。
【17年度の事業活動】
17年度は16年からスタートした「中期運営計画」の2年目に当たり、同計画に沿った活動を継続した。
調査・研究事業では、中心となる分科会は、16年度末で静電気利用技術分科会が廃止となる一方、粉体シミュレーション技術利用分科会がスタートし、19分科会となった。単独、合同合わせ、計49回開催された。開催回数は16年度に比べ3回減少したものの、参加者数は1936人とほぼ同数を確保した。
分科会の中でも、電池製造技術や粉体シミュレーション技術利用などのプロジェクト型分科会は1回の開催で100人規模の参加者があり、最先端技術の情報発信の役割を果たしている。
委員会関係では、技術用語検討委員会が総語数約1400を収載した「粉体用語ポケットブック」(新書判)を刊行したほか、ナノ粒子利用技術委員会が17年8月に「ナノ粒子のコンポジット化プロセスの現状と課題」、18年2月には「ナノ粒子の合成とリスク管理」のテーマでそれぞれ3件の講演を行い、ナノ粒子技術に関連する活発な議論を展開した。
展示会事業は17年10月11~13日の3日間、大阪市住之江区のインテックス大阪で「粉体工業展大阪2017」を開いた。前回の大阪開催(15年)を上回る203社・団体、621小間の規模で、来場者も9976人と前回(同)から16.4%増となるなど、成功裏に終了した。
また、大学・高等専門学校、研究機関の粉体研究者からシーズを募り、産業界のニーズとマッチングする「APPIE産学官連携フェア」を併設イベントとして実施した。産業界からは105人が参加するなど、活発なやりとりが行われた。そのほか、粉じん爆発情報セミナーや粉体シミュレーション基調講演などの併催企画にも多くの参加者があり、技術情報提供に加え、同協会活動の広報・普及につながったといえる。
■分科会新設で積極展開
【18年度の事業計画】
協会の3本柱である「分科会活動」「委員会・部門活動」「展示会活動」については、17年度から継続して(1)分科会活動の方向性の明確化(2)委員会活動の活性化と費用の有効活用(3)展示会事業の積極的な取り組み(4)分科会運営委員会の活動の今期新設の粒子積層技術分科会の活動強化―の活動目標を策定した。これら目標を基本に、中期運営計画の最終年度の活動を進めていく。
調査・研究事業の分科会では、分科会運営委員会を中心に新技術へのアプローチと、分科会間の情報交換・交流を通じ、技術分野ごとの情報収集と成果の発信を探求する。
中でも、新たに発足した粒子積層技術分科会は、ナノ粒子に代表される粉体の工業応用・製品化において、湿式や乾式積層技術に共通する基盤技術が直面している課題を取り上げ、粉体積層プロセスおよびシステム開発と改善などをテーマとして取り上げる予定である。
さらに、分科会活動の基盤となる単位操作関連技術分科会に目を向け、粉体シミュレーション技術利用分科会、粒子積層技術分科会との合同分科会を通じ、より一層の活性化を目指していく。
また、ナノ粒子利用技術委員会では、ナノ粒子材料の合成や分散、製品化の現状と課題となっている問題点を明らかにし、収集された情報を委員会や粉体工業展でのナノ粒子利用技術に関するセミナーで公開する予定である。
規格・標準化事業では、標準粉体委員会が15年度から継続する日本工業規格(JIS)の「JIS Z 8901(試験粉体1)」の改訂や協会規格「SAP 14-12(SAP試験用粉体3)」のJIS規格化を進める。
規格委員会では17年度から継続する二つのJIS原案作成委員会に加え、新たに二つの委員会を発足させる。粒子特性評価委員会では第54回、第55回の「ISO/TC24/SC4国際会議」に日本代表団として出席。国際規格作成に参画する。特に、同委員会が重点的に規格作成を進めるレーザー回折法、沈降法、粒子標準物質、気相計測法などを中心に新作業項目の提案を行う予定である。
海外交流事業では、17年度に締結したニュルンベルクメッセとの相互協力契約に基づいて、11月に開催する「国際粉体工業展東京2018」でニュルンベルクメッセへの無償ブース提供を行う。また、18年度に締結したニュルンベルクメッセ中国との同様の契約に基づき、「IPB2018」に協力し、会員ブースを出展する。
こうした各種事業を活発に展開し、粉体産業の発展に注力していく。
■最新の技術や製品が集結 国際粉体工業展東京2018
11月28日~30日 東京ビッグサイトで開催
11月28日から30日までの3日間、東京都江東区の東京ビッグサイトで「国際粉体工業展東京2018」が開かれる。主催は日本粉体工業技術協会。“この一粒…夢をかたちに―粉の技術―"をテーマに、粉体に関する最新の技術や製品、サービスなどの情報が発信される。入場料1000円(ただし、インターネット来場事前登録者、招待券持参者、学生は無料)。同協会が主催する粉体工業展は、東京会場と大阪会場で毎年交互に開催され、東京開催は今回で22回目となる。
展示では粉砕装置や分級・ふるい分け装置、混合・混練装置、供給・輸送装置など粉体に関する幅広い機器や装置を紹介する「製造・プロセス機器ゾーン」、計測・計装機器や制御システム、工場自動化(FA)装置などが集まる「計装・測定、ラボ機器ゾーン」、新素材やフィルター材、コンピューターシステム、ソフトウエアなどを紹介する「材料、エンジニアリング・情報ゾーン」が設けられる。
また、特別展示ゾーンとして、「先端材料ゾーン」「粉体シミュレーションゾーン」に加え、今回新たに日本包装機械工業会と共同企画の「包装機械ゾーン」が設けられることが注目される。
粉粒体製造工程の中で、包装は最終製品や中間製品の出荷や、次工程への保管につながる重要工程を担う。しかし、粉粒体の特性によって扱いが難しく、包装工程で困っているユーザーに対し、包装機械や技術、ロボット、関連機器・資材などを集結させ、課題解消につなげることを狙う。
(2018/6/20 05:00)