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(2018/9/16 06:30)
彼の名は「さかい三十郎」。正義感にあふれた庶民派である。そんな彼が出張時に出会ったノンフィクションのハプニングを「小さな事件簿」としてつづったのが本連載である。
「本当にそんなことが新幹線内で起こるの?信じられないなぁ…」との思いで読まれる方も多いかもしれないが、すべてノンフィクション(事実)なのである。彼の大好きな「映画の話」もちりばめてあるので、思い浮かべていただければ幸いである。
それでは車内で遭遇した事件簿の数々をご紹介させていただく。
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出張中に焦った経験はありませんか?肝心な時に限って事件は起こるものです。備えあれば憂いなし、ご用心を。
① 鞄のダイヤルキーが開かない。米原駅から名古屋駅へ向かう車内で、午後からの打ち合わせ資料の確認のためカバンに手をやった。香港事務所から来訪した知人に購入依頼していた本革の小型カバンである。
いつもならサムソナイトを持参するのだが、今回は近場で日帰り・書類も少ないこともあり、このカバンを利用することにした。膝に乗せ昨日登録したダイヤル番号に合わせた。しかし開かない。何てことだ。必死にトライするが開かない。
番号に間違いはない、ということはロック装置が正しく作動していないのだ。米原駅で改札を通過した後、財布と切符もカバンの中に入れたので、名古屋駅の改札口を出ることもできない。
駅事務室に向かい事情を説明しマイナスドライバーを借用、ロック装置をこじ開け取り外した。もう修復不能である。カバンは永年愛用している品を持参することにしましょう。
② 切符がない。琵琶湖近くの工場で残業を終え、土曜日の朝ホテルをチェックアウトし草津駅へ向かう。が、何てことだ。帰りの新幹線回数券が見当たらない。出張は何百回も経験しており、いつも財布の中に入れておく、なのにない。
あきらめて新規購入しようとしたが、昨晩知人との懇親時に酔っていたこともあり、財布の中でなく定期券入れに収めていた。アルコールが伴う懇親盛り上がり時には持ち物に要注意。
③ トイレ内でペーパーがない。都内の顧客訪問のため山手線を利用した時のこと。腹痛を覚え浜松町駅で下車しトイレに駆け込んだ。安心し身を整えようとした時、顔面蒼白となった。
必需品のトイレットペーパーがない、何てことだ。たまたまポケットにガムの包み紙があり応急処置を行い、トイレ入口にあるティッシュの自動販売機に向かった。が、今度は小銭がなく売店に向かう。再度トイレに戻るが次の客が利用しており、5分待ちの羽目に。以来、三十郎のカバンにはトイレ用ティッシュが常備されている。備えあれば……。
④ プレゼン画面が動かない。前夜の深夜残業に続き、プレゼン資料の作成を車内で頑張るが完成しない。“こうなったら一か八か、ぶっつけ本番でプレゼンだ”と覚悟し名古屋のホテル会場へ向かった。名古屋地区の顧客100人に対し新商品の紹介を行うが、途中で画面がロックした。動画が凍りついたまま動かない。営業所が準備していたパソコンの動画ソフトと、バージョンが合っていなかったのだ。
最近はUSB持参で軽快な会社員の姿も多いが、読者諸氏は先方機材とのソフト・バージョン互換性確認をお忘れなく。電話で互いの機材仕様を確認するだけでは不十分。特に大人数の会場設備を利用する場合には、必ず事前に操作機能を確認しておくことをお薦めしたい。備えは万全に……。
⑤ キャッシュがない。名古屋駅構内のレストランで夕食を終え精算しようとするが現金が足りない。カード利用を申し出るが、こんな時に限って利用できない。ATMの設置場所を教えてもらい向かおうとするが、無銭飲食と間違えられる。カバンと名刺を店に預け、現金を得たが非常に惨めであった。店内に入る前にカード処理可否・財布内の現金を事前チェックしましょう。
⑥ 電車が動かない。JIMTOF2006会場でのこと。機械搬入初日に大型機械を設置すべく会場へ出向いた。機械調整期間確保のため初日搬入にしていた。約束の13時となり機械を乗せたトレーラーが到着し、会場側重機(クレーン・フォークリフト)業者も集合したその時、三十郎の携帯電話が鳴った。
工場からの派遣者(据付操作員)が乗車している新幹線がトラブルでストップし、復旧の目処は立っていないらしい。トレーラーの運ちゃんは早く降ろしてくれと懇請する。次の運搬作業があるらしい。この機械は今日中に据付完了しないと、開催初日の稼働が心配でもあった。
判断に迷っていた時、設計者1名が到着した。互いの知識で降ろす決断をし作業半ばまで進めた頃、工場からの派遣者が到着し事なきを得た。大事な機械据付日には派遣者は前日泊させるなど万全の体制を取るようにしましょう(民間企業の実態は、午後の作業なら当日朝発を強いられるのが実情である。出張旅費の経費節減策だがケースバイケースで対応するように願いたい)。
映画「社長シリーズ(1956年~1970年)森繁久弥主演」社長一行は出張先で芸者・クラブママと火遊びをしようとするが、肝心の時に奥様が登場しあわてる羽目に。三木のり平、フランキー堺さんら脇役陣が料亭でおりなす劇中劇(芸者遊び・腹芸)には脱帽する。
(雑誌「型技術」三十郎・旅日記から電子版向けに編集)
(2018/9/16 06:30)