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(2018/9/30 07:00)
彼の名は「さかい三十郎」。正義感にあふれた庶民派である。そんな彼が出張時に出会ったノンフィクションのハプニングを「小さな事件簿」としてつづったのが本連載である。
「本当にそんなことが起こるの?信じられないなぁ…」との思いで読まれる方も多いかもしれないが、すべてノンフィクション(事実)なのである。彼の大好きな「映画の話」もちりばめてあるので、思い浮かべていただければ幸いである。
それでは遭遇した事件簿の数々をご紹介させていただく。
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販売促進が重要な営業業務であることは認識されているが、担当しようとする人材は少ない。多方面の能力が要求されることも一因であろう。“機械の知識”はもちろんのこと“文章力、プレゼン力・知識、企画・実行意欲”等々が必要とされる。
三十郎はこの業務に約20年従事しているが、失敗例を前回の“トラック・キャラバン”に続きご紹介させていただく。読者諸氏には他山の石に願いたい。
産業機械メーカーから新商品が発表されると、特徴をワン・ワードで表す愛称・ネーミングが発表されることも多い。しかし三十郎が知っている愛称にはクレームが続出して姿を消した商品も少なくない。
F1レーサーと名づけられた機械は、カタログの製品イメージに“レーシング・コーナーをタイヤから火を噴きながら疾駆するF1カー”が採用され、瞬く間に消え去った製品であった。
ネーミングはシンプルに付けた方がよさそうで、落語の世界にはこんなネタもある。
町民A「今度、有名産地を店名に付けたラーメン店が開店するらしいよ」
町民B「札幌・博多とか付ければ100円は高く売れるからね」
数日後のこと……
町民A「また開店するらしいよ」
町民B「この町内も有名になったものだよな、店の名は何だろう」
翌日のこと。
町民A「“東京一美味いラーメン店”だって」
町民B「次に開店する店はきっと“日本一美味いラーメン店”だよ」
こんな調子で町の噂が広まり“亜細亜一美味い店”も出てきます。
町民A「また出るらしいよ」
町民B「今度は何だね、世界一とか付けるんじゃないの」
できた店の名は“町内で一番美味い店”。町内の中に東京一、日本一、亜細亜一があるのだから、これにまさるネーミングはない。わかりやすい単純なネーミングにするのが得策のようだ。
ネーミングの際に重要なことは同一分野・業界で似たような名前が商標として登録されていないか調査しておくことだ。思わぬことで賠償請求されるケースもある。
ネーミングはいわゆるブランドとなり、ライバル他社や競合商品と比較された折に良いイメージを思い浮かばせ、販売促進・販路拡大につながる(車・化粧品・食品・飲料業界ではネーミングが販売量を左右するそうだ)。
一昔前までは他社商品と比較をしてPRすることはタブーだったが、最近は競合商品との優位性を前面に出しPRするメーカーも増えている(発端はコーラメーカー2社のPRだったと記憶している)。
寅さんの啖呵売や門司港のバナナの叩き売り、駅周辺やデパート内で商売されている実演販売も販促家業だろう。家庭電化製品・日用品の実演販売には凄腕の営業マンがいる。“あったら便利・使いやすい・簡単手入れ”を要領よくデモし、購入意欲を高揚させ、思わず財布の紐を緩めさせる。三十郎も思わず買ったモノがある。
コンプライアンスを遵守することも販売促進活動の重要な課題だ。一般的な指針は次とされている。
① 安全で優れた品質の商品を製作する。
② 独占禁止法を遵守し公正な企業間競争を行う。
③ 下請法などの諸法令を遵守する。
④ 外国との取引には輸出入に関する法令を遵守する。
これらを遵守しつつ、豊富な知識が必要とされる販売促進業務は大変だ。これでは手を上げる社員も少ないはずだ。
2009年夏に東京ドームで開催された都市対抗野球の決勝戦には驚かされた。お決まりのエール交換で互いの地名を応援したあと、試合中は企業名の叫びあいとなっていた。ハイブリッド車対決の両社だから仕方ないと思う反面、複雑な気持ちになっていた。
(雑誌「型技術」三十郎・旅日記から電子版向けに編集)
(2018/9/30 07:00)