[ オピニオン ]
(2018/9/19 05:00)
今夏は猛暑に台風、豪雨、地震と多くの自然災害に見舞われた。気象の観測・予測の精度を向上させる技術開発は万人一致の希望だ。一方で気象のビッグデータ(大量データ)の産業利用など新たなニーズも出てきている。気象業務の中長期計画は、どちらにも目配りした形で進める必要がある。
日本全国、いや日本に限らないと耳にするが、これほど自然災害の怖さを見せつけられた夏はなかった。国民に注意を促す報道が毎日のようになされ、穏やかな季節の到来が待たれる数カ月だった。
そんな中、国土交通省交通政策審議会の気象分科会は、提言「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方」をまとめた。副題は「災害が激甚化する国土、変革する社会において国民とともに前進する気象業務」。10数年先と具体性の高い未来の社会と技術を描いている。
柱の一つは気象業務の根幹である観測・予測技術の不断の向上だ。目標として「台風の3日先の進路予測誤差を、現在の1日先の誤差と同程度にする」「防災対応に重要な半日前における、線状降水帯の発生を含めた集中豪雨の予測精度を向上させる」などを挙げている。
もう一つの柱が、気象の情報・データの多面的な活用だ。気象庁の過去数十年の蓄積データを、コンピューターが読み取り自動処理する形で提供すると、小売りや運輸、観光などの企業は独自のビジネスデータとかを合わせた分析モデルを開発できる。さらに、気象のリアルタイムデータをそのモデルに適用、顧客の動向を推定したビジネスが可能になる。
また、高齢者や外国人を含む個人向けでは、災害時の避難支援や、熱中症防止など体調管理の情報を提供するサービスにつながる期待がある。生活を支える新たな基盤、ソフトのインフラストラクチャーとして、政府が掲げる超スマート社会「ソサエティー5・0」に重なる。
伝統的な技術高度化と、従来はなかった社会ニーズへの対応。二つを車の両輪として、前向きに進めていってほしい。
(2018/9/19 05:00)