[ オピニオン ]
(2018/9/21 05:00)
金融庁は2018年度末にも、金融機関の経営状態を検査する際に使用した金融検査マニュアルを廃止する。厳格で画一的な検査・監督のやり方を改め、金融機関との対話を通じ改善を促す手法に転換する。こうした改革で、金融機関が担保や保証に過度に依存したり、リスクを避けたりすることなく融資できる環境になるよう期待したい。
検査マニュアルに基づく検査・監督は不良債権問題の解決には一定の役割を果たしたものの、副作用をもたらした。金融機関が健全性を気にするあまり、リスクマネーの担い手としての役割が機能不全に陥った。
これまで金融庁は検査マニュアルに照らし合わせ、少しでも問題になる部分があれば、問答無用で行政処分を課してきた。信用を第一に考える金融機関が処分を恐れ、行動を萎縮させてしまうのは無理もない。
しかし、こうした姿は金融機関のあるべき姿ではない。00年代前半までと違い、今は不良債権問題も一段落。金融庁は改革の手を緩めることなく進め、金融機関が金融仲介機能を発揮できるよう後押しすべきだ。
金融庁は7月、金融庁長官としては異例の任期3年を務めた森信親氏が退任し、監督局長だった遠藤俊英氏が就任。また不良債権問題の対応をけん引してきた検査局を廃止するなどの機構改革を実施し、改革の意識を目に見える形にした。
19年度以降は、検査マニュアルを廃止し、企業や業界の実情を反映した新たなリスク評価手法を取り入れる。
また再生が求められている地域金融、発展が見込まれるフィンテックの両分野で、それぞれ専門チームを庁内に新設した。直接現場に足を運び、意識や思いにしっかり耳を傾け、対話を重ね、金融機関や金融システムの改善に役立てる意向だ。
検査マニュアルにそぐわない金融機関に相次いで行政処分を課し、“金融処分庁”として恐れられてきた印象を拭い去ることは容易ではない。対話を重視して業界の適切な発展を支える“金融育成庁”が印象づくよう粘り強い取り組みが必要だ。
(2018/9/21 05:00)