[ オピニオン ]
(2018/9/27 05:00)
10月に発足10年を迎える日本政策金融公庫の中小企業事業本部には、前身の一つである中小企業金融公庫から引き継がれた融資審査の「DNA」がある。「財務書類の精査」「経営者との対話」「現場に足を運ぶ」の三つだ。
中小公庫は戦後復興期の1953年(昭28)に通商産業省(現経済産業省)や大蔵省(現財務省)、日銀、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)などの中小企業施策や金融の熟練者を迎え入れてスタートした。
中でも公庫の融資審査の基礎は、興銀中小工業部からの出向者が築き上げたという。彼らの指導で現場を回って、業歴や経営者、製品、設備、生産、収支・財政状況などの項目を手書きで書き込んだ「調書」が作成された。
日本公庫専務の黒田篤郎さんは現物の当時の調書を読み「書き手の人柄や社長とのやりとり、企業への思い入れが匂い立つような感じがした」という。こうしたDNAの中堅職員による発揮と若手職員への継承に力を注ぐ。
日本公庫は地域金融機関と連携し、協調融資を強化・拡充しているが、肝心なのは現場の「目利き力」。人工知能(AI)の融資審査がもてはやされる今だからこそ、「足」で書いた調書の厚みが増してくる。
(2018/9/27 05:00)