[ 政治・経済 ]
(2018/10/5 18:30)
【ロンドン=時事】ノルウェー・ノーベル賞委員会は5日、2018年のノーベル平和賞を、アフリカのコンゴ(旧ザイール)で性暴力の被害者の治療や救済に取り組むデニス・ムクウェゲ医師(63)と、過激派組織「イスラム国」(IS)の暴力告発者でイラクの少数派ヤジディ教徒の人権活動家ナディア・ムラドさん(25)の2人に授与すると発表した。「戦争や武力紛争の兵器」としての性暴力の撲滅に向けた努力を評価された。
ムクウェゲ医師は1999年、内戦下のコンゴ東部ブカブで産婦人科治療を目的とした「パンジ病院」を設立。兵士や武装勢力による集団レイプなどで負傷した多数の女性や少女を治療し、心のケアや社会復帰などの支援を行ってきた。
ムラドさんは2014年、イラク北部でISに拉致され「性奴隷」にされた。IS支配地域からの脱出後は、その過酷な体験を基に、女性や少数派の人々らをジェノサイド(集団虐殺)や人身売買から守るための啓発活動を行っている。
賞金は900万スウェーデン・クローナ(約1億1300万円)で、授賞式は12月10日にノルウェーの首都オスロで行われる。
【略歴】デニス・ムクウェゲ氏
1955年3月、旧ベルギー領コンゴ生まれ。隣国ブルンジやフランスで医学を学ぶ。祖国の南キブ州で医療活動を開始。同州ブカブで99年、性暴力被害者の治療で後に世界的に知られるパンジ病院を設立した。2008年国連人権賞、14年サハロフ賞など人権関連の受賞多数。15年、ムクウェゲ氏の活動を描いたドキュメンタリー映画「女を修理する男」が制作された。16年には米誌タイムが「世界で最も影響力のある100人」の一人に選んだ。(ロンドン=時事)
【略歴】ナディア・ムラドさん
1993年3月、イラク北部シンジャルの農村で少数派ヤジディ教徒の家族に生まれた。少女時代、歴史の教師やメーキャップ・アーティストを目指した。2014年8月、村を襲撃した過激派組織「イスラム国」(IS)に拉致され、姉妹2人と共に「性奴隷」にされた。サハロフ賞(16年)など人権関連の複数の賞を受賞。16年、人身売買被害者の尊厳を訴える国連の親善大使に任命されたほか、同年、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」の一人に選ばれた。(ロンドン=時事)
(2018/10/5 18:30)