[ オピニオン ]
(2018/10/12 05:00)
ビール大手4社がプライベートブランド(PB)の扱いを巡り揺れている。ビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)の販売数量の統計で、PBの受託数量を自社の数値に含めるかどうかで、意見が割れているためだ。販売数量の公表値にPB構成比を明記することで一応の落としどころになったものの、完全に決着した様子にはなっていない。業界各社が早期に議論を決着させ、市場の分かりやすさを取り戻してほしい。
業界をまとめるビール酒造組合が1―6月のビール類の課税出荷数量を公表した際に、PBの問題が表面化した。PBは小売りや卸などの流通業者が開発したブランドで生産は外部に委託する。キリンビールがイオンの第三のビールの製造を受託し、この分をキリンの数量に加算した。これにサントリービールなどが異論を唱えた。
「前年になかったPB分を統計に加えるのは市場実態を表していない」や「他社ブランドの販売量を自社のシェアとして加えるのは適切ではない」というのが反対の理由。それならPB分を除いて計算すれば決着するかと言うとそう簡単ではない。
キリンは「各社の販売数量に客観性を持たせるため、1992年に課税出荷数量をベースにすることを決めた。PBを除くのはその根本が崩れる」と正当性を訴える。
実は2017年にサッポロビールが第三のビールの受託製造を先に始めた。今回問題が大きくなったのはキリンの受託分が年1000万ケース(1ケースは大瓶20本換算)を超える規模であり、熾烈なシェア争いの中で放っておけなくなったからのようだ。
公表数値にPB構成比を明記することで、一度は沈静化するかに見えた。しかしその後、各社が発表する月次の販売動向を見ると、市場の見方がPBを含めるか除くかでまちまち。含めるか除くかで前年比プラスかマイナスかを分ける微妙な水準だけに、書く側も困惑する。
PBの受託製造は拡大する可能性もあり、18年通期の販売統計で問題が再浮上するのは避けられないだろう。
(2018/10/12 05:00)