[ オピニオン ]
(2018/10/16 05:00)
安倍晋三首相が2019年10月1日から消費税率を8%から10%へ予定通り引き上げると表明した。今後、課題は、財政再建に向けてどういった税制の青写真を描いていくかだ。景気への影響が少なくない消費税に重点を置いていく姿よりも所得税に軸足を移す姿のほうが望ましい。抜本的な税制改革を実施すべきだ。
消費税は導入され約30年が経過し、最大の税収項目となった。消費税導入は、世代間の負担の不均衡が背景にあった。生産年齢人口減少が見込まれている中で、社会保障費を使うのは高齢者で、負担するのは所得税を納める現役世代という構図のままではもたないということだ。
しかし、社会保障費の急激な増加を踏まえると、支出の抑制・効率化とともに、安定税収確保のための税制改革が欠かせない。その際に、所得税改革に踏み切るべきだ。
その理由として、まず日本の税収に占める個人所得税の比重が、先進国の中でも最低水準にまで低下していることだ。経済協力開発機構(OECD)のデータに基づく財務省資料によると、15年の日本の国民所得に占める個人所得課税の比率は7・9%だ。これは米国やドイツが13%、フランスの12%と比べても低い。
また、理由の二つ目は、消費税のもつ性質そのものだ。消費税には逆進性がつきまとう。来年の消費税率引き上げの際には、食料品などに軽減税率を適用するものの、逆進性がなくなるというわけではない。所得税は逆に、高所得ほど税率が上がる累進構造となっている。高齢化の進展で所得格差は拡大する傾向にあるから、所得再分配効果は一段と重要になる。
もともと日本の税制は、戦後の「シャウプ税制改革」以来、所得税中心だった。現行の体系は、バブル崩壊以降の景気対策として所得税減税が実施されてきたためだ。合わせて累進税率も緩和された。
税収の確保を図るとともに、所得格差に歯止めをかけるため、早期の所得税中心の税制改革が求められる。
(2018/10/16 05:00)
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