[ オピニオン ]
(2018/10/22 05:00)
新米が出回り始める季節。頬が緩む米好きの方も多かろう。今年は日照時間が十分だったので、2018年産の米の作況はおおむね平年並みのようだ。天候不順で野菜は不足で高騰気味だが、新米は充足しそう。
豊かな現代日本では想像しづらいが、一昔前まで食料の不足と価格上昇は社会不安に直結した。ちょうど100年前、米の急騰が引き起こしたのが「米騒動」だ。
1918年7月、富山県魚津町(現魚津市)の漁師のおかみたちが北海道に運ぶ米の船への積み出しを押しとどめた。「価格騰貴せる米を他国へ持ち行かれては、品不足となり益暴騰すべしとの懸念より、群を成して海岸に駈け付け米を積ませじと大騒動に及びし」(1918年7月25日付富山日報)。騒動は全国に広がり、時の内閣を退陣に追い込んだ。
それから1世紀。事件の発端となった富山から米の新品種が誕生した。その名も「富富富」。食べた人にほほ笑んでほしいとの思いを込めたこの米の特徴は甘みの強さ。そして高温への強さ。今年の猛暑の中でも順調に生育したという。
米をめぐる歴史に思いをはせつつ、安心して米を食べられる世を作ってきた人々への感謝の念を、新米とともにかみしめるとしますか。
(2018/10/22 05:00)