[ 機械 ]

【別刷特集】ロボットを内包する工作機械 搬送機能を持つMU―S600V

(2018/11/2 13:30)

 製品ライフサイクルの短縮化で超多品種少量生産が求められ、量産加工並みの生産性を追求するスマートファクトリーの動きが加速している。また、労働者人口の減少や長時間労働の見直しなど労働環境の改善も急務だ。そのため自動でワーク供給を行う搬送装置の接続が一般化し、品種変更にも柔軟に対応できるロボットシステムの導入は増加傾向にある。当社はこうした要求に応える自動化技術として搬送装置の機構を内包することで生産計画の変更にも柔軟に対応し、ライン再構成可能なスマートマシン「MU―S600V」を開発した。その特徴を例に、変種変量生産への対応を解説する。

オークマ技術部 システム技術課 藤本 尭紘

工場全体を改善

 ロボットシステム導入時の課題は(1)機械前面の作業エリアにロボットを設置することが多く、手動による初品加工での作業性、機械操作性が阻害される(2)初期導入コスト(3)品種変更時の段取り替え作業でロボット操作にたけた熟練者を要すること―が挙げられる。

 協働ロボットやレーザースキャナーなどのセンサー技術の進化で安全柵が不要となり、作業性、操作性を損なわないシステムが普及しつつある。一方、それらはさらなる初期導入コスト高と作業者の高いスキルが必要で、導入の障壁となる。

  • 図1 MU―S600V機械構成

 当社の「新コンセプト5軸制御立形マシニングセンタ MU―S600V」は機械幅1400ミリメートルの極少スペースで直径最大600ミリメートルまでのワークを加工できる。鋼材、アルミ、耐熱鋳鉄、FC材などの素材も十分に加工可能な連続トルク45ニュートンメートル主軸(主軸テーパーNo.40)を持ち、使いやすさを追求。クラス最高レベルの面積生産性を実現した。

 主軸側に前後(Y軸)、上下(Z軸)の直線2軸と直径600ミリメートルのテーブル側に左右(X軸)1軸と回転割り出し(B、C軸)2軸を持ち、テーブル割り出し機構とテーブルX軸動作で、機外へのワーク移載を行うロボット搬送機能を内包した。従来機にない搬送という拡張機能だ。

 2台連結時は搬送、ライン構成を革新し、コンパクトでシンプルな無人化、自動化ラインを実現する。工場全体の改善を促す“ロボットとの一体化”をコンセプトとする革新的なスマートマシンである。

スマートマシンシステムを実現

  • 図2 機械2台連結構成

 同機はテーブルを両側面に直角割り出し(B軸プラスマイナス90度)した状態でX軸方向に700ミリメートル移動し、同機両側面シャッターからテーブル上のワークを外部へ搬出できる(図1)。作業性、操作性はワーク搬入出方向を機械操作や保守が不要な機械側面にして前面の操作エリアを確保。搬送エリアは重複せず、人とシステムが共存する機械デザインとした。機械を連結設置し、両機搭載治具をワーク把持具に見立て機械間(工程間)で直接ワークを受け渡し、工程間の中間搬送装置を不要とする未来のスマートマシンシステムを実現している(図2)。

 従来の5軸制御マシニングセンター(MC)2台+前面走行ロボットシステムに比べ、同機2台の連結システムでは当社比約3割の省スペース化を実現する。初期導入コストでは中間搬送装置および従来のロボットシステム構築時のシステムインテグレート費用が不要になる。さらに、同一機使用で保守性・操作性を確保。ロボット本体が不要となるため、品種変更時の段取り替え作業では課題のロボット操作にたけた熟練者も不要となる。こうした機能や特徴により、製品ライフサイクル内で発生する開発、試作期の単体加工、増産期の設備増加、減少期の設備再構築といった生産規模に合わせ、あらゆる局面で容易にスマートなライン再構築が可能だ。

 我々は「IIoT(Industrial internet of things)」などを起点に自動化が加速する中、「MU―S600V」を一例に、新たな発想との相乗効果であらゆる加工現場の生産性を高めるスマートマシン、人とシステムが共存する新しいモノづくりを工作機械メーカーの立場から発信していきたい。

JIMTOF2018特集

(2018/11/2 13:30)

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