[ オピニオン ]
(2018/11/30 05:00)
米中貿易戦争の終着点が見えない。米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は30日から開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて会談し、通商問題などを協議する。中国は米国からの輸入拡大などの改善案を提案するものの、両国の完全合意は難しいという見方が多い。何らかの成果があっても、一時的な休戦にすぎず、中長期的な対立が続きそうだ。こうしたなか、日本は、アジア各国との共存を軸とした新たな通商戦略を構築することが求められる。
米国問題に精通した日本総合研究所の呉軍華理事は、「米中関係は対立から対決に向かうグレー戦争の段階だ」と強調する。その象徴が、トランプ政権の外交面で存在感を増すペンス副大統領の保守系シンクタンクのハドソン研究所での10月4日の演説だ。気まぐれなトランプ大統領ではなく、国務省や国防総省の専門家などを交えて念入りに組み立てた内容で、中国に対する米国の考え方を訴えた。
講演は三つのポイントがある。まず、米国が中国を助けてきた政権の方向が転換期を迎えたこと。国家資本主義という異質なルールに依拠した大国が経済・安全保障の両面で米国の覇権を脅かす存在となりつつあるためだ。また、経済問題に限らず、政治、軍事など多岐にわたった点も見逃せない。さらに、「中国人的・中国共産党的発想と論理を見据えた初のアプローチ」(呉理事)も盛り込んだ。政権中枢に、中国にいた人物がいることをうかがわせる。
一方、中国は一定の合意をし、追加関税拡大を防ぎ、可能なら縮小に持ち込みたい。しかし、ハイテク産業育成策「中国製造2025」見直しなど構造問題で難色を示し、完全合意への道筋は不透明だ。世界の覇権争いという背景があり、両国は簡単に土俵から下りるという訳にはいかない。貿易戦争は長期化する、という可能性が高い。
日本は、まず多国間の自由貿易体制の維持を図っていくことが重要だ。一方で、アジア諸国との連携をより緊密にし、米中をけん制していく高度な通商戦略を描く時期にきている。
(2018/11/30 05:00)