[ オピニオン ]
(2018/12/4 05:00)
いわゆる「徴用工訴訟」で韓国大法院(最高裁)が、新日鉄住金に続いて三菱重工業にも損害賠償を命じる判決を下した。第2次世界大戦中の強制労働をめぐって、今後も同様な判決が続く公算が大きい。日韓関係に亀裂が生じかねない深刻な事態を、双方の努力で何としても乗り切らなければならない。
両社に対する最高裁判決の注目点は、両国政府が1965年に結んだ日韓請求権・経済協力協定で決着済みになったはずの個人請求権を認めたことだ。協定には「両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が(中略)、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と明記されている。このため日本政府は、協定に背くものだとして猛烈に抗議している。
協定には相手国やその国民または企業に対し、いかなる請求権も主張できないことを記した条文もあり、個人請求権の存否にかかわらず、請求に応じる義務はなくなったと言える。韓国の国民が日本側に賠償を求めることがあれば、日本に代わって韓国政府が救済に当たるというのが、協定の趣旨だ。韓国政府は責務を果たす必要がある。
ただ、韓国の文在寅政権を担ぐ支持者の間には、日本から賠償を引き出さなければ、納得できないとの強硬意見がある。日本政府の主張を容認すれば、文大統領の支持基盤が根底から崩れかねない。
それでも協定に沿った対応を怠れば、国際法違反との非難を免れられない。国際社会の信頼確保へ、覚悟を決める必要がある。日本政府は韓国に対して毅然(きぜん)たる態度を示しながらも、大統領の苦しい立場を理解し、厳しい決断に向けた環境整備に惜しまず協力すべきだろう。
両国の産業界も互いが重要なパートナーであるとの強力なメッセージを、両国民に伝える必要がある。今の状況が続けば両国の国民感情が悪化し、ビジネスの大きな足かせになる。日本の産業界が歴史の教訓から学び、両国がともに繁栄する道を歩む姿勢を示すことで国民同士の絆が強まれば、必ずや道が開けると信じたい。
(2018/12/4 05:00)
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