[ オピニオン ]
(2018/12/5 05:00)
自治体の水道事業に民間企業の参入を可能にする水道法改正案が、今臨時国会で成立する見通しだ。運営権を民間企業に売却する「コンセッション方式」と呼ばれる方式を導入しやすくすることが柱となっている。経営が悪化している水道事業を民間のノウハウで効率化する狙いがある。ただ、世界では民営化されたものが再び公営化される例が多く、この流れに逆行している。水質の悪化や水道料金の高騰などのリスクもあり、自治体は慎重な検討が必要だ。
コンセッション方式は、現状でも水道事業に導入可能だ。しかし、自治体は事業認可を返上しなければならず、導入実績はない。法改正により、自治体が認可を受けたまま運営権だけを民間企業に売却する事を認め、売却後も自治体が事業に一定の責任を持つ仕組みとした。
水道法改正は、水道事業収支が悪化していることが背景にある。全国の水道事業の約3割が赤字で、給水人口の少ない小規模な事業者が多い。少子高齢化・人口減少に伴い、水道水の消費量は減少している。厚労省によると、ピークだった2000年の1日3900万立方メートルから、14年には同3600万立方メートルに減り、このペースでいくと60年に同2200万立方メートルにまで落ち込むと推計している。
しかし、水道民営化が抱える問題もある。まず、安全対策の手抜きを生んだ。英国では、1990年代に赤痢患者が増え、フランスでも未殺菌のままでは飲めない水が提供されるなどの水質の悪化問題が発生した。
また、水道料金の高騰も各地でみられた。例えば、パリでは85年から09年までに265%上昇した。こうした問題を受けて、海外では、一旦民営化されたものが再公営化されるケースが後を絶たない。
改正案では、自治体が事業者の業務状況を調査したり国が立ち入り検査することを可能とする内容を盛り込んだ。しかし、どこまで健全な運営を担保できるかは不透明だ。水道民営化がもたらすリスクを再検証したうえで、慎重に対処していくことが欠かせない。
(2018/12/5 05:00)
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