[ 機械 ]
(2019/2/1 05:00)
【安定した超精密加工を実現する超精密加工機 FANUC ROBONANO α―NMiA】
富士の裾野に広がる広大なファナック本社エリア。その一角に2016年完成の信頼性評価棟が建つ。電波暗室、電磁耐性試験室、加振室を備え、高負荷での長時間運転などの試験を全製品対象に行う。信頼性を徹底追求する姿勢を象徴する施設だ。
精密金型の鏡面加工などに使う加工機「ロボナノ」の旧来モデルは、その点、ファナックらしくなかった。14年にまとめた信頼性・保守性ファーストの理念「壊れない 壊れる前に知らせる 壊れてもすぐ直せる」とは距離があったことを内田裕之副社長は率直に認める。もっとも、旧来ロボナノは一般に正式販売した商品ではなく、提供先は研究機関などに限られていた。18年に本格的に市販するのにあたり、設計を根本的に見直した。
信頼性の課題は軸受にあった。空気静圧軸受から、剛性が高く、精度も担保する油静圧軸受に改めた。空気制圧型は15年ほど前の初号機開発のスタートからこだわっていたが、極めて繊細で調整にも困難さがあった。3種類の軸受を1年ほど費やして徹底検証し、「商品化に最も現実的」(内田副社長)な油静圧型を採用した。
信頼性と同時に、0・1ナノメートル(ナノは10億分の1)という超高精度を実現するためにも、自社の最新・最高の数値制御(NC)装置、サーボモーターなどを搭載。構成部品そのものの精度を高めるべく、新鋭の精密研削盤を導入した。
さらに故障の確率が他より高い要素部品を加工機の手前側に配置するなど、復旧を早められるようにも再設計した。
洪榮杓ロボナノ研究部長は測定のしやすさにもこだわった。これまで独立した複数の測定器をそれぞれで操作、数値を表示していた。結果、測定しづらいだけでなく、配線、画面が並ぶ状態でまるで「家電量販店のテレビ売り場のようだった」(洪部長)。これをNC装置で全て操作し、数値も表示できるように見直した。
旧来型は信頼性の問題で展示会での実加工が難しかった。新型は他製品と同様に船に載せて海外展示会に出し実演もできる。国内外で、今日のファナックの理念を訴える製品が一つ加わった。
(編集委員・六笠友和)
【製品プロフィル】
スマートフォンのカメラレンズの金型や高級時計の部品など精密な製品を加工する工作機械。NC装置やサーボモーターなどの重要部分に、自社の最上位モデルを搭載した。高い信頼性と性能、生産性を実現した。加工面の粗度、品位が向上する。0.1ナノメートルの指令、制御が可能。これまで欠かせなかった加工後の仕上げなしで鏡面にできる。
(2019/2/1 05:00)