[ オピニオン ]
(2019/2/1 05:00)
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が1日に発効した。保護主義を強める米国に対し、自由貿易の防波堤としての役割が求められるものの、気がかりなのはフランスなどEU主要国の政情不安だ。主要国の政治が混乱すれば内向き志向が強まり、自由貿易が軽視されかねない。日本はEUとのEPAをけん引して互いに恩恵を享受し、EUの動揺を防ぐ側面支援を担いたい。
日・EUのEPAは、世界の国内総生産(GDP)ベースで約3割、貿易総額で約4割を占める巨大な自由貿易圏だ。日本では94%、EUでは、99%の品目の関税が撤廃される。日本は自動車や自動車部品などの輸出拡大につながるほか、消費者も欧州産のワインやチーズを安価に購入できる利点がある。
保護主義の対抗軸として、米国に軌道修正を促す役割もある。ほぼ全ての分野で関税がなくなる日本とEUに対し、関税が残る米国は輸出競争力が相対的に低下する。当然、トランプ米大統領は自由で多角的な貿易体制への回帰を意識せざるを得ない。また、米国は自国に有利な2国間協定を迫るが、日本とEUが共同戦線を張れば日・EUのEPAで決めた条件が落としどころになりうる。
一方、EU主要国に懸念も出てきた。英国は、EUと離脱協定が成立せずに離脱する「合意なき離脱」のリスクが拡大。フランスは、構造改革に反発するデモが頻発し、欧州の盟主であるドイツもメルケル首相の求心力が低下する。主要国の政情が不安定になれば自国優先の主張やポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭し、自由貿易や国際協調が置き去りにされかねない。
自由で互恵的な経済成長を望む日本としては、EUとのEPAを軌道に乗せ、経済的な結び付きを強めてもらいたい。双方の輸出が拡大し、恩恵がEU各国に波及できれば、政情の安定化に寄与する。ひいては自由貿易の価値を世界に広めることにもつながる。国際協調を重視する日本とEUが経済連携を深め、先頭に立って保護主義に立ち向かうべきだ。
(2019/2/1 05:00)