[ その他 ]
(2019/2/5 05:00)
循環型、低炭素社会実現に向けた廃棄物処理技術の開発が進んでいる。天然資源の消費を抑制はいうまでもなく、廃棄物の排出を抑制する「Reduce(リデュース)」、再利用する「Reuse(リユース)」、そして再資源化する「Recycle(リサイクル)」していく、3Rの取り組みが重要だ。
効率よく再資源化 破砕・分離・選別 的確に
廃棄物を処理し、リサイクルするための第一段階で行われるのはサイズを最適化する破砕。次に再資源化に不要となる異物の除去、あるいは有機性廃棄物のみの取り出しといった工程を行う。
破砕対象となる廃棄物は自動車用タイヤなどのゴム製品、廃家電製品、コンクリートがら、木材、身近なものではペットボトルやプラスチックなど。破砕機には(1)1枚の回転刃で破砕する「1軸破砕機」(2)2枚の回転刃で破砕する「2軸破砕機」(3)ハンマーでたたいて破砕する「ハンマー式破砕機」(4)破砕室内のチェーンが回転して対象物を破砕する「チェーン式破砕機」―などがあり、効率的に破砕するため、対象物の種類、破砕後の目標とするサイズなどによって、使い分ける。
破砕機にはかみ込み量が大きいときや破砕困難な過負荷廃棄物投入時における事故発生を防止する過負荷防止装置、粉じん飛散を防止するための集塵装置やミスト発生装置などの周辺機器など、作業者の安全や健康面に配慮した装置・機器・機能が搭載されている。
一方、破砕した廃棄物は金属やプラスチックなど、さまざまな材料が混在しており、効率的に再資源化するため、選別機を利用し、選別、分離工程を行う。風力を活用し、材料の比重差で選別を行う「乾式」、水槽でプラスチックの材料ごとの比重差を利用して選別を行う「湿式」、回転するドラム内部の破砕物を穴が開いたふるいにかけて選別する「回転式(トロンメル)」、金属を選別する「磁力式」のほか、さらに精度が高い選別を行える近赤外線センサーや色彩センサー、X線照射などが利用される。
太陽光発電パネル需要増 リサイクル技術 実証進む
2009年、家庭の太陽光パネルが発電し、使いきれなかった電気を10年間に限って固定価格で電力会社が買い取る太陽光発電の「余剰電力買取制度」は、12年に「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」に一本化。この後押しを受けて、太陽光発電システムは一気に普及拡大した。19年度末にはFITが終了する家庭が50万件以上になるといわれている。
パネルの普及に伴って、故障や破損などで使用済みとなるものも増加の一途をたどるといわれている。こうした中、18年12月、環境省は「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」を作成、発表した。第二版は16年3月に発表された第一版の内、埋め立て処分方法や有害物質の情報伝達、災害対応策に関して内容を見直したものだ。
また、環境省は40年に80万トンの廃パネル発生を試算している。パネルに換算すると5000万枚。リサイクル技術がないと今後、埋め立て処分場の不足が予想され、パネルを効率よく分解する技術が求められている。
太陽光発電パネルの構成部材の中で一番大きな割合を占めているのがガラスだ。重量ベースで全体の約8割にも達するという。一般に普及している結晶シリコン太陽電池モジュールは長期信頼性保持のため、ガラスとシリコンセルの間の封止材に引裂強度、衝撃強度などに優れたEVA樹脂を使用している。しかし、このEVAの優れた強度がガラスとセルの分離を困難にしていた。
太陽光発電パネルメーカー大手、トリナ・ソーラー・ジャパンは廃ガラスリサイクルを推進する業界団体のガラス再資源化協議会(GRCJ)へ参画し、リサイクルシステムの構築に取り組んでいる。
同社営業技術サポート部の高山道寛部長は「参画企業各社と連携して、使用済み太陽電池をリサイクルするための技術開発、リサイクルシステムの構築を目指してきた。当社のパネルは太陽光発電協会が公開している廃棄物処理中間処理業者であれば、適正に処理することができるようになった」と語る。
分離しやすい新技術も リユース考えて製品開発
これまで使用済みパネルはほとんどが産業廃棄物として処分されてきた。しかし、「ガラスとセルを分離するホットナイフのような技術もでてきており、リサイクルの実証が進んでいる」(高山部長)。「ホットナイフ」はガラスとシリコンセルの間にあるEVAを加熱した刃で切断し、ガラスを破砕せずに分離回収する技術であり、その革新性から注目を集めている技術だ。
「分離したパネルからガラスだけでなく、銀、銅なども回収・分離し、リサイクルしていくための技術開発も必要。そのためにはパネルメーカーとしてリユースやリサイクルを念頭に置いた製品開発にも取り組んでいきたい」(同)。
環境に配慮した循環型の次世代社会構築に向け、産業界一丸となった廃棄物処理技術の検討・開発が進められている。
(2019/2/5 05:00)