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[ エレクトロニクス ]
(2019/2/6 05:00)
【有機EL搭載スマートフォン「AQUOS zero」】
液晶ではないシャープのスマートフォンはどうあるべきか―。パーソナル通信事業部の小林繁部長は、日本で初めて自社製有機ELディスプレーを搭載したスマホ「アクオスゼロ」で突きつけられた題目を振り返る。シャープは高精細液晶ディスプレーを看板に掲げてきた。それだけに有機EL採用は、単に流行に乗っているのではなく、新しい価値を実現するためと示したかった。
そこで、有機ELの強みである軽さと薄さを最大限に引き出したのがアクオスゼロだ。6インチ超の大画面サイズに高性能の半導体を搭載しながらも、重量は146グラム。重量が200グラム前後ある他社製に対し、「長く持ち続けても疲れないハイエンドスマホ」のコンセプトを打ち出した。
軽量化に向け、他の部品も見直した。特に、スマホの骨格部分はアルミニウムから、より軽量なマグネシウムに置き換えた。この際、他社と共同でマグネシウムと樹脂を一体成型する技術も確立した。小林部長は「この技術は世界初ではないか」と胸を張る。
有機ELは薄い上、曲げやすい。そこでディスプレーを左右両端から中央にかけて反らせるという、世界でも例がない立体形状に仕上げた。表示用のドライバーICなどの曲げられない電子部品と接触しないなど、設計の調整に苦労を重ねた。
こうした新技術をふんだんに採用しつつ、開発は2年と短期間で終えた。これは、あらゆる要素技術を自前で持ち、「垂直統合の開発ができたからだ」と小林部長は分析する。加えて、シャープには「大部屋」と呼ばれ、組織の垣根を越えて連携する風土が今も根付く。
システム開発部の前田健次部長によると、「部署は違えど、同じ釜の飯を食った仲という認識がある」。部署間の調整を要する設計がしやすい。
シャープは親会社の台湾・鴻海精密工業から、スピード経営を求められている。元来のシャープに、スピードが備わっていることを示した格好だ。(大阪・平岡乾)
【製品プロフィル】
軽量ながら6.2インチ大型有機ELディスプレーと、3130ミリアンぺア時の大容量バッテリーを採用し待ち受け時間などが長い。液晶ディスプレー採用の既存の旗艦機種「アクオスR2」は動画撮影に強く、会員制交流サイト(SNS)をよく使う人向け。同ゼロは軽さを生かし長時間、動画を見たりゲームに没頭したりしたい人向け。
(2019/2/6 05:00)