[ 機械 ]
(2019/2/6 05:00)
【高速液体クロマトグラフ質量分析計LCMS―9030】
「定量分析と定性分析の両装置をそろえてこそ、一人前の質量分析メーカーだ」(奥村大輔分析計測事業部ライフサイエンス事業統括部MSビジネスユニットマネージャ)―。
島津製作所は近年、試料を構成する成分物質の量を調べる「定量」向けで、業界最高感度の高速液体クロマトグラフ質量分析計などを展開してきた。一方、試料にどんな成分が含まれているのかを調べる「定性」向けの装置ラインアップは手薄だった。この定性用途で先行する世界大手に対抗すべく開発したのが「高速液体クロマトグラフ質量分析計LCMS―9030」だ。
定性分析のスペックは分解能で表現される。「9030」は、定量向けで培った強みの高感度を継承しつつ、3万という高い分解能を達成するため、社内リソースを駆使。新薬開発での化合物同定、極微量な体内代謝物の同定など、高感度での定性分析が必要な試料に対し、高精度に定性・定量の両方ができる装置として提案する。
長さ1メートル弱のイオンの飛行時間分析部と呼ぶ部品は筒状のフライトチューブと、その直下で30枚弱の平板電極を積層するイオン反射ユニットで構成する。筒部の端面と厚さ0・5ミリメートルの平板電極は、それぞれプラスマイナス10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の平行度で配置が必要と理論計算で判明。精密機械加工の専門部署の協力を得て作り上げた。基板設計の難易度も高かったが、「最高のパフォーマンスがどうやったら出せるか考えて作り込んだ」(大城朝是同ビジネスユニット副主任)。
開発終盤戦。ある設計検証で精度誤差がでた。ドア開閉などの室温変化によるわずかな金属の熱膨張・収縮への対策が足りなかった。「重要部分で根本対策が要る。一番苦労した」(工藤朋也同副主任)。実験とシミュレーションを併用し、海外にいた伝熱と制御理論に詳しい社内有識者の助言も得て克服。温度安定性に優れ、質量校正を減らす、他社品より優れた“キラーポイント”の一つとして高評価を得ている。(京都・松中康雄)
【製品プロフィル】
四重極型と飛行時間型(TOF)と呼ぶ2種類のイオン質量分離機構を持つ。独自開発のコア部品採用で、他社従来品比と同等の精密な質量分析精度を確保しつつ、検出感度を同3倍に高めた。製薬や法医学、環境、食品などの研究分野で、複雑な化合物の高精度な定性・定量分析ができ、構造解析に有効な情報が得られる。
(2019/2/6 05:00)
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