[ ロボット ]
(2019/2/8 05:00)
【スリムアーム協働ロボット「CZ10」】
安全柵を設けることなく、人と同じ空間で作業できる協働ロボット。これまでロボの導入が難しかった作業の自動化が期待され、市場のニーズも高まる。不二越は初めて協働ロボを開発し、2018年に「CZ10」を投入した。
これまでもロボ開発を手がけてきた開発陣だったが、協働ロボは従来とは異なる経験の連続だった。その一つが国際安全規格「ISO10218―1」の第三者認証の取得。人の接触など外力を検知して安全に停止する「機能安全」の規格で、伊東輝樹ロボット開発部部長は「手探りのまま、認証機関と何度も話し合いながら進めた」と振り返る。
認証では、柵の中で使う従来のロボとは異なり、予期せぬ事態が発生しても確実に止まり、安全性を担保できる機能とは何か、といった考え方や、それを実証することが求められた。検証でも、例えばロボに斜め方向から力が加わった場合、治具を自ら開発して力を正確に検出する必要があるなど、「測定装置の信ぴょう性も含め、試験そのものの精度が要求された」(伊東部長)という。
CZ10は電圧を48ボルト以下に抑えた安全超低電圧回路を採用し、制御装置も新たに開発。すべての関節に独自センサーを搭載した。またアームに指が挟まれない「本質安全」の構造を採用し、デザイナーを起用して外観にも工夫をこらした。
関節部分のアクチュエーターなど複数の独自機構を採用したCZ10は、生産現場にもこれまでにない経験をもたらす。デザインを優先すべき箇所や、作業性が悪い工程の改善など、量産も苦労の連続だった。
初めての経験に開発期間が延びる一方、早期に参入して足場を築きたい販売側の要望のはざまで開発陣は奮闘し、発売にこぎ着けた。
市場の期待も大きい協働ロボだが、明確な用途を確立できておらず本格的な普及に至っていないのが現状だ。伊東部長は「プロジェクトチームを発足して協働ロボットの使い方も考えていく」と指摘。次期モデルでは軽量化に取り組む意向を示すなど、貪欲に先を見すえる。(西沢亮)
【製品プロフィル】
国際安全規格「ISO10218―1」の第三者認証を取得。人の接触を検知して停止する機能安全、アームに指を挟まれない本質安全、感電リスクを低減する低電圧仕様を採用した。独自センサーを各軸に搭載し、精密な作業も実現できる。白を基調とし、軽量・スリムで滑らかなフォームデザインを採用した。可搬質量は10キログラム。
(2019/2/8 05:00)