[ オピニオン ]
(2019/2/27 05:00)
米朝首脳による再会談が27日からベトナム・ハノイで開かれる。進展のない非核化を引き出したい米国が、北朝鮮が求める「見返り」提供に慎重な姿勢を軟化させ始めた。経済制裁の緩和をはじめ、朝鮮半島の終戦宣言や平壌への連絡事務所設置、在韓米軍の縮小や撤収などのカードが予想されている。米朝の取引は東アジア全体の安全保障に影響を与える懸念があり、警戒感も高まっている。
協議の焦点は、北朝鮮の非核化をどれだけ具体化できるかだ。2018年6月の米朝首脳会談で「朝鮮半島の完全な非核化」を共同声明でうたったものの、双方の主張の隔たりを埋めきれず、交渉は停滞したままだ。
「北朝鮮は核放棄をする気はない」との見方が広がっている。これに対し、北朝鮮分析に定評のある磯崎敦仁慶応義塾大学准教授は、「北朝鮮は戦略性をもち、彼らなりの合理的判断に従ってものごとを動かしている」と強調する。それを前提にすると、「金正恩は核保有のメリットとデメリットをふまえて、体制が保証されるなら、取引材料にできると考えている」との見方をしている。
北朝鮮の現地視察に基づく分析で定評のある三村光弘環日本海経済研究所主任研究員は、「北朝鮮にとって経済的な面から核を捨てるインセンティブになりうるのは、米国や国連安保理事会の対北制裁から解き放たれ、『普通の発展途上国』として、経済建設に邁進できるさまざまな環境が用意されること」とみる。
一方、米国のトランプ大統領は、混迷する内政から国民の目をそらし、外交に活路を見いだしたい思惑がある。北朝鮮から非核化への具体的措置を引き出す成果を得るため、さまざまなカードをきってくる可能性もある。
日本政府は米国が非核化の見返りに安易にカードをきることへの警戒感が広がる。米国向け長距離ミサイルの開発で両国が手を打つ展開を恐れる。米国の朝鮮半島への関与は弱まり、日本のリスクは高まる。会談を注視していく必要がある。
(2019/2/27 05:00)
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