[ オピニオン ]
(2019/4/10 05:00)
ファーウェイ問題をはじめとする米中貿易交渉が、大詰めを迎えている。ファーウェイ問題を通じて軍事機密や図面などの重要情報を相手に盗み見されるリスクが明らかになり、同盟諸国も通信網の保護や規制方向へ相次ぎかじを切った。通信網や技術・知財を国の安全保障のために守ろうとする最近の国際情勢変化は、わが国にとって追い風だ。モノづくりの優位を取り戻す好機とみる。
半導体、液晶、太陽電池、家電―。モノづくり主要産業の世界トップテン企業の大半は、かつて日本勢が占めていた。それから約30年で日本は1位から滑り落ち、IT技術を生かした米国と、中国や韓国、台湾の企業が入れ替わった。中国や韓国企業は大規模な設備投資を行って最新工場を建設、低コストの優位性で各国の市場を奪取。新たな投資でさらにコストダウンを図り、シェアを奪う構図が続いた。スケールメリットが生きる“グローバル生産”が、それを可能にしたと見るべきだろう。
しかし今や、その構図は、微妙に変わってきているように感じる。グローバル生産で雇用が生み出せない国では人種摩擦や暴動が相次ぎ、政府は自国民の雇用確保を真剣に考えざるを得なくなった。自動車をはじめ、雇用効果や裾野の大きい産業は、国内生産を求める政府の動きがさらに強まると予想される。人件費の安い国で集中生産してコストを下げる従来法は、時代遅れになるのではないか。
仮にコストが安くても関税をかけて、国内生産と同じ価格にする政治的手段もある。環太平洋連携協定(TPP)や日欧の経済連携協定(EPA)のような地域別ブロックの動きが増えると思われる。
重要技術や知財、ブランドは高コストをかけても守り、国内産業を保護する。モノづくりで日本が長年かけて培った、現場の強みを生かせるチャンスだ。国内工場の新規投資や設備投資も、ここへ来て増加傾向にある。高付加価値品や先端技術の製品はなるべく国内で作り、知財・ブランドを守る。政府による支援策も欠かせない。
(2019/4/10 05:00)
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