[ 金融・商況 ]
(2019/5/21 05:00)
世界の大手銀行の外国為替担当者の間では、円相場に強気な見方が急速に台頭している。今月に入り、国際的な通商摩擦の予期せぬ激化を目の当たりにし、ストラテジストは逃避通貨の利点を強調。英国の欧州連合(EU)離脱やイタリアの政治情勢などに絡んだ未解決のリスクも、安全と目される通貨への逃避の流れを促している。円相場は今月、全ての主要通貨に対してアウトパフォームしており、対ドルでは週間ベースで2012年以来の長期上昇となりそうな勢いだ。
モルガン・スタンレーは円がドルとユーロの両方に対して上昇すると予想。ドイツ銀行は対ポンドと対人民元での円買いを勧めている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチも円高・ユーロ安を見込み、シティグループは円高・ドル安を予測する。
米経済状況が悪化することになれば、連邦準備制度による金融緩和の可能性を市場は一段と織り込むことになり、円高・ドル安に拍車がかかるとアナリストはみている。
BofAメリルのG10通貨調査責任者、アタナシオス・バンバキディス氏は「外為市場が貿易戦争のリスクを十分織り込んでいるとは考えられない」と指摘。「今や緊張が高まって貿易戦争のリスクが増した。われわれには市場が油断していると見受けられる」とし、貿易戦争のリスクに備え、オプション経由で「対円でユーロをショートにすべきだ」と話した。
モルガン・スタンレーは円が対ドルで1ドル=105円、対ユーロでは1ユーロ=119円と、1月3日のフラッシュクラッシュ以来の高値を付けると見込む。BofAメリルはプットスプレッドを通じたユーロ・円ショートを推奨している。
モルガン・スタンレーの為替戦略グローバル責任者、ハンス・レデカー氏によると、同社は通貨ポートフォリオを「一層のリスクオフ市場環境」に備えたものにしている。「まずリスク選好の後退が円を押し上げる見通しだが、米金融当局が大幅な景気減速に対応して利下げすることになれば、ドル・円の下落はさらに進行するだろう」と述べた。(ブルームバーグ)
(2019/5/21 05:00)