[ オピニオン ]
(2019/5/29 05:00)
米国のトランプ大統領夫妻が28日、離日した。宿泊先のホテル周辺をはじめ、厳しい警備で交通渋滞しがちだった東京都心のビジネス街にも、こころなしかほっとした気分が漂う。
国賓としての3泊4日の滞在は、世界一多忙な米国のリーダーとしては長い。北朝鮮問題など東アジア外交に関する日米の共同歩調に加え、安倍晋三首相が個人的に親密な関係を築いたことが奏功した。「安倍さんにしかできなかったこと」と多くの関係者が賞賛する。
産業界が注視する貿易交渉の結論は、夏の参議院選挙後に先送りされた。楽観は許されないものの、米側は農産物の関税にフォーカスしつつあるようにも見える。トランプ氏離日後のこれからが交渉の本番だ。
経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)が体調不良で休養。国賓をもてなす宮中晩餐会(ばんさんかい)ばかりか、30日の経団連通常総会を欠席する異例の事態となった。産業界の“司令塔”不在に不安がよぎる。
トランプ氏は依然として環太平洋連携協定(TPP)に拒否反応を示したが、日本の譲歩ラインは、かつて米国とTPPで合意した内容が基本になるはずだ。通商は互恵の世界。一方的な“おもてなし”だけでなく、粘り強い協議を当局に期待する。
(2019/5/29 05:00)