[ オピニオン ]
(2019/6/11 05:00)
エネルギーの安定供給と環境負荷低減の両面で、もっと産業界の意見を取り入れるべきだ。
政府の2019年版エネルギー白書は、主要国の温暖化対策とエネルギー政策を分析している。日本の温室効果ガス(CO2)排出量は近年、低下傾向にあるものの、1人当たり排出量では先進国35カ国中で27位と平均を下回るレベルにとどまっている。このため再生可能エネルギーを主電源化する取り組みなど、一層の対策強化が必要だと強調している。
省エネ機器の普及では最先端を自負する日本が、発電などエネルギー供給側を含めた調査で主要国に劣後していることは残念だ。中長期の排出量削減目標に向けて努力を傾ける必要がある。しかし問題は、その道筋が見えないことである。
近年の日本の排出量低下は、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)による太陽光発電の急速な普及と、原子力発電所の相次ぐ再稼働が主な要因と考えられる。だがFITによる国民負担増加が問題視され、原発もこれまでのペースで再稼働が進むかどうか疑問が残る。今後、日本のCO2削減は頭打ちになる恐れが大きい。
これは、かねてから産業界が懸念していた事態だ。懸念が現実になりつつある中で、政策の方向転換が迫られている。
経団連は4月に、日本の電力システムの再構築を促す提言を発表した。日本のエネルギーの現状を「地球温暖化対策や産業競争力強化に逆行する」と厳しく批判。原発の新増設や、送配電網の更新・次世代化など取り組む必要があるとしている。このため、次期「エネルギー基本政策」に複数のシナリオを示し、将来像を明らかにすることを政府に求めている。
官民の共同歩調を重視する従来の提言に比べ、より踏み込んだ強い主張がうかがえる。提言を主導した中西宏明会長(日立製作所会長)は病気療養中だが、エネルギー政策の見直しを広く産業界が求めている事実は変わらない。今回の白書を下敷きとした新たな政策に、産業界の意見を反映してほしい。
(2019/6/11 05:00)
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