[ オピニオン ]
(2019/6/26 05:00)
『最後の晩餐(ばんさん)』と言えば、天才レオナルド・ダ・ヴィンチの世界的な名画。彼は遠近法、明暗法、解剖学などあらゆる科学的な知識を総動員して大作を仕上げた。
実はこの名画には、ルネサンス時代の一人の天才が深く関わっていた。その名は、ルカ・パチョーリ。数学者であり、修道士であり、奇術師であり、裕福な毛皮商人の家庭教師という万能人だった。ルカは、家庭教師をしていた時に、簿記の技術を学んだ。
その後、1494年、世界最古の複式簿記の教科書である『算術、幾何、比及び比例全書』(略称スムマ)を出版する。同書は全615ページで、簿記だけでなく、数字を使った算術や幾何学を解説しているという。複式簿記を解説しているのは「計算および記録に関する諸説」という27ページの章、文字数で約2万4000字だ。
活版印刷技術が実用化されたこともあり、スムマはやがてロングセラーとなる。もし、この書物がなければ、西洋に複式簿記が広まることもなく、資本主義や株式会社も生まれなかった。
ルカから、ダ・ヴィンチは遠近法の助言を受け、歴史的絵画につながった。芸術の世界を変えたダ・ヴィンチの背後には、ビジネスの世界を変えたもう一人の天才がいた。
(2019/6/26 05:00)