[ オピニオン ]
(2019/6/27 05:00)
百貨店が覇権を競った時代を駆けた経営者が、鬼籍に入った。伊勢丹で社長・会長を務めた小柴和正さんは、同社で初めて創業家以外からトップに就き、秀和による株式買い占め問題や提携先の米バーニーズ経営破たんなど多くの荒波を乗り越えた。
実力もあったが、強運も持ち合わせた。ゴルフの腕前はシングルプレーヤーで、ホールインワンを4回も経験した。側近で財務面を支えた伊勢丹元会長の橋本幹雄さんは「百貨店経営者がゴトオ日に店に居ないようでは」とからかったが、多くは取引先とのパイプの強化。
オンワード樫山の馬場彰さんら大手アパレルとの強いきずなが、1996年10月の高島屋新宿出店を端緒とする“新宿百貨店戦争”を優位にした。
業界は最古参の松坂屋と大丸が2007年にJ・フロントリテイリングとして統合したように、生き残りのため、出店による拡大から縮小均衡に戦略を転換した。伊勢丹も三越と合併に至った。
6歳下の中村胤夫元三越会長・社長は新宿店長時代、対面のライバル伊勢丹に通い詰め、真摯に学んだ。その姿を小柴さんは高く評価した。消費喚起に、業界として「孫の日」を提唱するなど人情の機微に通じた名経営者だった。
(2019/6/27 05:00)