[ オピニオン ]
(2019/7/9 05:00)
産学共同研究で、大学が企業から大型の資金を引き出すための「オープンイノベーション機構」(OI機構)が動いている。特定研究の遂行だけでなく、大学全体を支える民間資金獲得という役割に期待したい。
OI機構は、文部科学省の2018年度からの支援事業だ。慶応義塾大学、山形大学などまだ一部での設置にとどまるものの、産学連携の新たな仕組みを構築するものとして注目される。大学内組織ながら、メンバーの多くは企業出身者だ。各人の経歴を生かして1件年数千万円など大型の産学共同研究を成立させるのがミッションだ。
そのために大学は、ビジネスに近い競争領域で、1企業とがっちり組む研究企画を提案する。山形大は地元企業との小規模な取り組みも大切にしつつ、「博士研究員(ポスドク)を雇用してでも産業に貢献する、という意識をOI機構で強めたい」と高橋辰宏教授は説明する。
実は共同研究の大型化は、研究そのものに使う“直接経費”拡大を意識しているだけではない。水光熱費や研究支援人材の人件費などに使う“間接経費”を、「直接経費の3割」などで確保することが真の狙いだ。従来大学の持ち出しとなっているこの部分を、企業側に認めてもらう慣習に転換しようとしている。将来は、用途を限定せず学内で広く使える予算に発展させたいと関係者は期待している。
官民連携のイノベーション推進の旗の下で、産業界の合意も得られつつある。「未来社会に向けては、多様な領域の発展が必要だ。その源を枯らさないサステナビリティーを大学に期待する。それに向けて活用できる間接経費を、各企業が納得する形で集めてほしい」(経済団体の幹部職員)との声が上がっている。
こういった動きの中で一つ気になるのは、競争領域の案件となるだけに秘匿部分が多いことだ。OI機構の実情は、政府の他事業と比べ見えにくい印象だ。公費を投入する以上、いずれは成功事例など公表し、他大学に波及させる意識で取り組んでほしい。
(2019/7/9 05:00)
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