[ オピニオン ]

産業春秋/街のシンボル

(2019/7/10 05:00)

名古屋城天守の木造復元は、名古屋市が目指す2022年末の完成が難しくなった。現在のコンクリート製天守の解体許可が文化庁から得られていないためだ。

名古屋城は城郭の国宝第1号。1945年の空襲で天守などが焼失、59年にコンクリート製を再建した。総工費6億4000万円のうち2億円は寄付。市民が支えた再建だ。

河村たかし名古屋市長は2009年の市長初当選後、木造復元への関心を表明した。名古屋市は全国の主要都市の中で観光地人気が最も低い。起爆剤を望む気持ちは理解できる。

一方、早急な推進に戸惑う声もある。「築城以来の石垣にこそ歴史的価値があり十分に調査・保全すべきだ」と有識者。「天守はエレベーターを設置しバリアフリー化を」と障がい者団体らは主張する。ただ一般市民の関心は薄くないか。総工費は500億円以上だが寄付金は3億4000万円に留まる。

名古屋城と比べ印象的なのが4月に火災にあったフランス・パリのノートルダム大聖堂だ。政府が新デザインの募集を表明し論争が起きた。100億円単位の高額寄付の申し出にさえ異論が出た。街のシンボルについて多くの人が考え、議論が起こる。観光先進国に学ぶことはないだろうか。

(2019/7/10 05:00)

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