[ オピニオン ]
(2019/7/12 05:00)
日本政府が半導体製造に欠かせないフッ化水素などの韓国向け貿易規制を強めたことは、内外に大きな波紋を広げた。所管の経済産業省は「貿易管理上の通常の措置だ」として、世界貿易機関(WTO)ルールにも完全に適合すると説明する。
だが日韓の対立が深まっているこの時期に、韓国の企業活動に支障が出る規制を実施に移したことは“報復的な措置”の疑いを免れない。
韓国への規制は2点。まず、フッ化水素など3品目を包括許可から個別許可にする。「輸出先から短納期出荷やひんぱんな仕様変更を求められ、運用がルーズになっていた」という。審査には90日間程度が必要とされるものの「善良な利用なら淡々と審査する」と、より短期間で輸出できる可能性もある。
もう一点の規制は、先端製品や兵器などの重要品目以外の製品類の輸出管理を優遇する「ホワイト国」から韓国を外すことだ。韓国は輸入品が通常兵器に流用されたかどうかを確認する仕組みを運用しておらず、もともと「ホワイト」要件を欠いていた。さらに当局同士の対話が滞るなど信頼関係が失われたことで規制強化を決めた。
日本側は「法令上、“トランプ流”の特定国への制裁的な貿易規制はできない」と説明。韓国が要件を満たせば規制を解除可能としており、12日に来日する韓国の当局者にもその旨を説明する。ただ規制の改廃には政令改正を伴うため、政治的判断を排除できない。
韓国政府が第2次大戦中の勤労動員問題で日韓間の条約に違反する状態を放置するなど、日本企業の活動を制約している状態は許しがたい。日本政府が韓国に具体的な措置を求めるのは当然であり、わが国の産業界は政府の姿勢を支持している。ただ貿易戦争が拡大することは、日本のみならず世界経済にとってマイナスだ。
高品質部品や素材の輸出は、日本にとって“伝家の宝刀”といえよう。交渉の材料として活用するのはいい。実際に刀を抜いて相手に重傷を負わせるのは、得策ではない。
(2019/7/12 05:00)
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