(2019/9/11 05:00)
台風一過で気がかりなことがある。東京五輪・パラリンピック会場の大腸菌問題だ。東京都はトライアスロンなどが行われる台場の海を三重の水中スクリーンで囲い、大腸菌をブロックする作戦。先週末に実証実験を終えた。
風呂や台所などの雑排水とトイレから出る汚水。それに雨水が一緒になって下水管から処理場に流れ込む。都の採用する「合流式下水道」は、インフラとしては一般的なものだ。
雨水が一定量を超すと、処理場がパンクしないよう粗く処理した“上澄み”を河川に逃す。仕組みを理解すれば、残念ながら豪雨の翌日に大腸菌が増えるのもやむを得ないと思える。
「ウチの技術を試してほしい」―。都には浄化処理を強みとする中小企業から多くの提案が寄せられているという。ただ台場のような内海でも浄化は適さない。潮の満ち引きや河川の影響により、海水は一晩で入れ替わる。都の関係者は「スクリーン方式を基軸に、不足なら他の方法を組み合わせたい」と話す。
ブロック作戦は、対症療法にすぎない。根治するには雨水を下水と別ルートで処理する「分流式下水道」の整備が必要だが、コストを考えれば難しい。五輪で浮かび上がった大都会の弱点に妙薬はないものか。
(2019/9/11 05:00)