(2019/9/12 05:00)
京都・清水寺の「清水の舞台」は、170本のケヤキに支えられている。貫主の森清範師は朝のお勤めの前に、1本の木を抱きしめながら「きょうも、あんじょうよろしゅう」と願うのが日課だ。
江戸時代に現在の形になった清水寺。400年間、風雪にさらされ、傷みは激しい。2017年に始まった大改修では、舞台の最も奥にある9本の柱を“根継ぎ”した。腐ったところがある柱を少し持ち上げて、下部から1メートル切り取り、新しい木と差し替えた。
ケヤキの耐用は、800年程度という。「あと400年しかおへん」と清範師。次の世代のために、20年ほど前に山を買って、用材としてケヤキとヒノキの苗木を6000本ほど植林した。「これでも足りしません。使えるのは10%くらいどすな」。
清水の舞台や本堂には、修理のための大きな素屋根(すやね)がかけてある。木で組んであり、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根を交換する際は足場になる。檜皮葺の屋根もそうだが、素屋根を組む職人の匠の技は伝承されるのか、少々心細さを感じた。
「何かお役に立てれば…そう考えましてな」。大改修は21年春まで続く。その大事業の中でも、清範師は大きな目で、はるか先を見据え、人と木と技とを育んでいる。
(2019/9/12 05:00)