(2019/9/25 05:00)
家畜伝染病「豚コレラ」の感染が拡大し、埼玉県で関東地方初の感染事例が見つかった。農林水産省は事態の深刻化に対応するため予防的なワクチン接種の採用に踏み切った。接種を決断した以上、まずは早期に豚コレラを根絶し、問題なく輸出できる環境を取り戻してほしい。
ワクチン接種についてはトレーサビリティー(履歴管理)確保の問題や輸出への影響などのデメリットが指摘され、これまで農水省は養豚業者の飼養衛生管理基準の順守の徹底や野生イノシシ対策の強化などで豚コレラ終息を目指してきた。
だが事態の悪化を受け、江藤拓農水相は20日に臨時会見を開き「予防的ワクチン接種を可能とする環境を整える」と述べ、飼養豚にワクチンを接種し感染を防ぐ対応に乗り出すと表明した。豚コレラは2018年9月に26年ぶりに発生し、中部地方を中心に拡大。1年を経ても終息に至っていない。
飼養豚にワクチンを接種すれば感染を予防できる。ただ実施すると外部からの感染豚とワクチン接種豚の区別ができなくなるほか、国際獣疫事務局(OIE)から日本が「清浄国」と認められなくなり、豚肉輸出にブレーキがかかることが懸念される。豚肉に対する風評被害が広がる可能性もある。こうした事情からワクチン接種に踏み込めなかったようだ。
しかし事態は好転するどころか、関東地方に拡大し、さらに悪化してしまった。養豚業者にとっては深刻な事態だ。目に見えないウイルスの侵入におびえ、もし感染が出れば全頭殺処分となる。処分後も豚コレラが終息していない以上、再開の決断は容易ではない。
ワクチン接種に道を開いたなら、豚コレラの根絶を全面的に進め、終息宣言を早期に果たしてもらいたい。輸出再開や風評被害への対策は、それから改めて進めれば良いのではないか。
ただ豚コレラ以上に警戒すべきなのが、世界で猛威を振るうアフリカ豚コレラだ。こちらはワクチンが存在しない。国内への侵入をなんとしても食い止めなければならない。
(2019/9/25 05:00)
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