社説/日米貿易協定、最終合意 ウインウインの関係はまだ先だ

(2019/9/27 05:00)

日米両国首脳は、新たな貿易協定の交渉が最終合意したことを確認する共同声明に署名した。日本から輸出する自動車・同部品への追加関税という最悪の事態が回避されたことを評価したい。ただ、日本側が求めていた自動車・同部品にかけている関税の撤廃は事実上の先送りとなったことから、さらなる交渉努力が必要となる。

合意文書では、自動車分野への追加関税が回避されるとともに、米国が特に重視している牛肉・豚肉輸出など農業分野の市場開放は、過去の環太平洋連携協定(TPP)などで認めた水準にとどめることを確認した。日米両政府は、年内の協定発効を視野に入れ、正式署名や手続きを進めることになる。

日本にとって最大の関心事といえる自動車分野については、米国が日本から輸入する乗用車(関税率2・5%)や小型トラック(同25%)、自動車部品(主に同2・5%)にかけている関税を引き続き協議する。

会談後に記者会見した安倍晋三首相は「日米双方にとってウインウインとなる結論を得られた。わが国経済のさらなる成長や世界経済の発展に寄与するもので、意義は極めて大きい」と述べた。だが合意の内容は米国に押し切られた格好で、真の「ウインウイン」の関係は今後の交渉に委ねられたといえよう。

一方のトランプ大統領は、米農産品の関税引き下げを背景に「米国の農家や牧場主にとって莫大(ばくだい)な利益になる」と語り、農業分野での実績をアピールした。農家や牧場主は来年の大統領選の結果を左右する票田であることから、再選を目指すトランプ大統領の選挙対策にしてやられた感じが強い。

経団連は「今回の合意をテコに、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の早期実現などを通じ、インド太平洋地域の安定と繁栄、さらには自由で開かれた国際経済秩序の維持・発展に引き続きリーダーシップを発揮してほしい」とのコメントを寄せた。その言葉通り、政府には自由貿易の旗手という誇りを持って交渉を継続する努力が求められる。

(2019/9/27 05:00)

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