(2019/10/7 05:00)
経済、社会、環境の課題を解決した未来像を描いた「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連総会で採択されてから4年が過ぎた。日本の産業界にはビジネスチャンスとして受け入れられ浸透するが、未来の市場を守ろうとする危機感が欠けているのではないか。
「誰一人取り残さない」という言葉を聞いたことがあると思う。“SDGsの精神”として知られるこの言葉が掲載された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を読んだ人は少ないのではないか。
アジェンダは「我々は、世界を持続的かつ強靱(きょうじん)な道筋に移行させるために緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段をとることに決意している。我々はこの共同の旅路に乗り出すにあたり、誰一人取り残さないことを誓う」と宣言している。「緊急に必要な、大胆かつ変革的な手段」が求められるが、この部分が抜け落ち「誰一人取り残さない」ばかり取り上げられている印象がある。
9月23日、米ニューヨークの国連本部でスウェーデンの少女のグレタ・トゥーンベリさんが「人類は絶滅の入り口にいる。それなのに経済発展のおとぎ話ばかり」と演説し、温暖化対策に本気で取り組まない大人を批判した。
世界各地で自然災害が頻発し、浸水などで企業も大きな損害を受けている。今後、災害で家や仕事を失う人が増えると、消費者の購買力が衰えて企業は健全な市場を失う。
SDGsも同じだ。貧困、飢餓、資源不足などの課題解決を急がないと社会情勢は不安定となり経済活動も停滞する。SDGsに賛同した理由としてビジネスチャンスをあげる経営者が多いが、将来の危機回避が動機として語られることは少ない。
NPO法人・環境文明21の藤村コノヱ代表は「中途半端な危機感では、中途半端なビジネスしか獲得できない」と指摘する。逆に言えば、強い危機感を抱くほど大きなビジネス獲得の原動力となる。うわべだけでなく、SDGsの内容を深く理解することが競争力につながる。
(2019/10/7 05:00)
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