産業春秋／綺麗数寄

フローリングの床は汚れが目立つ。モップや雑巾で掃除していたが、水拭きロボットを使ってみると想像以上に便利だ。自宅がそれほど広いわけではないものの、腰痛持ちにはありがたい。

整理・整頓・清掃が徹底された清潔な製造現場を訪問すると気持ちがよい。自宅に友人らが頻繁に遊びに来ることはなくなったが、きれいな現場をまねて、いつ来客があっても慌てないくらいには掃除をしておくようになった。

「断捨離」など掃除・片付けがブームになって久しい。また必要最小限のものだけで生活する「ミニマリスト」のような生き方も、ライフスタイルの一つとして定着している。

日本を代表する総合芸術である茶道の世界にも、立派な茶道具がなくても隅々まで掃除を行き届かせることで、客をもてなすことができるという考え方がある。確かに茶道の名言集をひもとくと「きれい数寄。心の中、なお以（も）って専らなり」や「心の内より綺麗（きれい）数寄」などが並ぶ。

いずれも身の回りをきれいにするだけではない。心を整えることが重要であり、知識・技術を使いこなす心が最も大切だと説く。とはいえ心にはすぐに“雑草”がはえる。心を掃除するロボットの登場が待ち遠しいのは筆者だけだろうか。