(2020/1/21 05:00)
多くの企業が人手不足に苦しんでいる。中小企業は特に深刻だ。打開策のひとつは外国人労働者の活用であり、行政の制度整備や支援策が欠かせない。
政府は2019年4月に外国人の在留資格に「特定技能」を新設し、製造業3業種はじめ介護、飲食、農業などの14業種で民間雇用の裾野を広げた。しかし11月末の速報値では、同制度の利用者はわずか1019人にとどまっている。
すでに36万人超が存在する現行の「技能実習生」から、特定技能へ一定条件で移行できるが、想定したほど進んでいない。技能実習生は技能の習得を目的としており、3年で帰国しなければならないが、特定技能は追加で5年間の在留が認められる。
それでも移行が進まないのは、家族の帯同が許されず、資格取得が限定的で、外国人から日本で働くことを敬遠されている。技能実習生を抱える企業が、特定技能に移行すると給与引き上げなど待遇改善を求められるのではと恐れ、移行させないという面もあると言われている。
外国人を単純労働人材とみなし、能力の向上に応じた処遇をしなければ、優秀な外国人人材が集まらないのは当然だ。
特定技能制度に基づく外国人の受け入れを支援する「登録支援機関」は、19年11月に3210件。政府はこれらの支援機関が本格的に機能する20年度に利用が急増すると予想している。
日本商工会議所は昨年10月、外国人材の受け入れ政策を要望した。中小のニーズは高まっているとしながらも「何をどう準備するのか」「どこに相談すればよいか」といった声が数多く寄せられているという。
そこで当面の施策として、相談機能の拡充やマッチング機会の提供を訴える。また大都市への外国人材偏在や、外国人向け社宅・公営住宅の改装費用、家電などの購入費用の補助を求めている。
新制度では、報酬は日本人と同等かそれ以上としている。受け入れる企業側には覚悟と責任が生じる。制度を軌道に乗せるために、官民それぞれの立場で一層の努力が必要だ。
(2020/1/21 05:00)
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